結局のところ、国会において議決された改正案は、友人たちが求めた原案までには至らなかった。
原案では飲酒運転で死亡事故を起こした場合、死刑、無期懲役、または5年以上の懲役とした。 韓国では殺人罪の最小刑量が5年なので、最小刑量を同じくすることによって、「飲酒運転は殺人と同じ」というメッセージを伝えるためだった。
しかし、実際は国会審査過程で「3年以上の有期懲役、または無期懲役」にとどまった。
また、飲酒運転の摘発対象となる、血中アルコール濃度も改定された。
これまでは、血中アルコール濃度が0.05~0.10%で運転免許停止処分であったものが、0.03%~0.08%へ、運転免許取り消し対象は0.10%以上から、0.08%以上へと、引き下げられた。
日本では血中アルコール濃度ではなく、呼気中のアルコール濃度を調べるのが一般的。飲酒運転とされる呼気中のアルコール濃度を血中アルコール濃度として置き換えると、0.03%~0.05%が酒気帯び運転とされ、3年以下の懲役、または50万円の罰金とされる。(参照:
はじめての自動車保険「飲酒運転・酒気帯び運転の罰則・違反点数」)
飲酒運転の処罰は強化されたたが、それでも安全な車社会の実現に向けた課題はまだ多い。
専門家たちは代表的に「始動ロック」の義務化や、「交通事故処理特例法の廃止」などを挙げる。
始動ロック装置とは、一度摘発された飲酒運転ドライバーの車に飲酒測定装置を設置し、飲酒状態ではエンジンがかからないようにするもの。 再犯のリスクを抑えるのに効果的であるといえる。
また、韓国では「交通事故処理特例法」によって、事故被害者が死亡や重傷に遭わず軽傷で済んだり、横断歩道上の事故、中央分離帯を越えた反対車線への進入などといった重過失ではない場合、交通事故を起こした加害者が総合保険に加入していれば、法的に責任を問われたりしないようにしている。
これによって、多くの運転者たちは、飲酒運転を起こしても、「保険処理すれば大丈夫」と錯覚してしまう。
「ユンチャンホ法」が施行された初日、より厳しくなった道路交通法で摘発された数は、なんと全国で300件あまり。負傷者は40名ほど、死亡者も1人でた。(参照:
中央日報)
すでに、「第二のユン・チャンホ」が出てしまった形となった。
「飲酒運転事故は、単なるミスではなく、殺人」。飲酒運転による悲劇を無くすには、まだまだ時間が必要だ。
<文・安達 夕
@yuu_adachi>