パチンコ業界を悩ます、シビアな店内の喫煙所問題

最大の問題は、喫煙所の仕様

 今、パチンコ店の頭を悩ましているのは、「喫煙所」のことである。  例えば、どこに設置すべきか。仮に600台クラスの中型パチンコ店の場合、稼働率50%と想定しても300人の遊技客がいて、150名の喫煙者がいることになる。彼らが1時間に1本タバコを吸う場合、喫煙所には常時9名~10名が利用する計算となる。  一度に15名程度が入れる大型の喫煙所を設置すべきか。最大5名程度が入れる喫煙所を複数設置するのか。それをどこに設置するのか。まずはこれが問題なのだ。ロードサイドの郊外店ならいざ知らず、駅前の小型店にそんなスペースはない。  それ以上に頭を悩ましているのは、「喫煙所」の技術的な仕様である。  とりあえず灰皿を置いて「ここが喫煙所です」という訳にはいかない。法律が定める技術的な規格基準を達成した喫煙所でなければならないからだ。  この技術的な規格基準が、いまだ厚生労働省から正式に発表されていない。正式な規格基準は、厚生労働省がパブリックコメントの募集等により、その内容を明らかにした際に確定される。それが発表されない。喫煙所を設置しようにも、どのような喫煙所なら良いのかわからないのだ。  しかし、12月11日、厚生労働省から「煙の流出防止にかかる技術的基準(案)」というのが発表された。少なくとも現時点で厚生労働省は、このレベルで考えているという指標である。  その内容が、パチンコ業界が想定していた内容よりも、かなりシビアだった。  簡潔に記すと、 (1)禁煙スペースから、喫煙スペースに向けて、風速が0.2m/秒であること (2)壁、天井によって区画されていること (3)たばこの煙が屋外に排気されていること となる。(1)や(2)は、業界側も想定していた内容であり、対策は十分可能だ。  問題は(3)である。喫煙所内の煙は、建物の外に出せと言っている。  要は、壁に穴を開けるか、元々設置されている排気用ダクトに繋げという事だろう。これは中々困難な指標である。ビルの一部で営業しているパチンコ店は、ビルの壁に穴を開けられるのか? 賃貸ビルだった場合、ビルオーナーはそれを許すのか。店内に複数の喫煙所を設置する場合、そのすべての個所に穴を開けるのか。  多くのパチンコ店は、喫煙所の設置すら困難になる可能性もある。  最後に、これはどちらかと言えば、パチンコ業界内部の人たちに訴えたい事であるが、「パチンコ店の禁煙化」に向けて、業界内外の関連業者たちが、それぞれの喫煙所設置を奨めている。  しかし、その業者が販売しているいくつかの「喫煙所」は、明らかに「屋外排気」が出来ない仕様のものも含まれている。  パチンコ店に限らず、2020年4月に向けて、多くの商業施設において喫煙所が設置されるだろう。工事人工や日程の確保も難しくなる。しかし、国が認める技術的基準を満たさない「喫煙所」を設置すれば、功を焦って二度買いをしなくてはならない羽目に陥る。気を付けて欲しいものだ。 ※(本稿はあくまでパチンコ店に特化したもので、飲食店や他の商業施設が同様の内容になる確証はない。) <文・安達 夕 @yuu_adachi
Twitter:@yuu_adachi
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