《取りこぼした優秀な人材をAIが確保!?》AIでの効率化は適材適所の採用を生む可能性も(写真は実際の企業と関係ありません)
AI(人工知能)による採用選考が、注目を浴びつつある。’17年にソフトバンクが書類選考を行ったことに始まり、試験的だったサッポロビールも’19年卒採用から本格導入することを発表。新卒採用以外でも、今年11月には吉野家がアルバイト採用にAI面接サービスの実験導入を開始した。
ほかにも導入を検討しているのは、住友生命、リクルートグループ、損害保険ジャパン日本興亜、横浜銀行など、いずれも人気企業だ。しかし、実施数はまだほんのわずか。’18年3月のHR総研の調査によると、’19年新卒採用でAIの活用を検討している企業は11%だったが、実施する企業は2%に留まった。就職情報サイト「就活SWOT」を運営する酒井一樹氏は、次のように解説する。
「AI選考は、選考の成功例と失敗例を学習させて成り立ちます。そのためには大量のデータが必要となり、どうしても大企業に限られる。しかも、欲しい人材は企業ごとに異なるため、個別にカスタマイズする時間も費用も要します」
数年先も導入率は3~4%程度と予想され、過半数の企業が導入することは当面なさそうだというが、それでも注目されているのは、AI選考による恩恵が高く評価されているからだ。
「一番大きな効果は書類選考の時間削減です。ソフトバンクでは75%、サッポロビールでは40%削減できたという事例も出てきています。人気企業は、企業研究が甘い学生も含め多くのエントリーが集まるので、ES(エントリーシート)を読む作業の効率化が大幅に図れますし、過去の内定者ESのコピーのような内容を見抜くことも可能です。削減できた時間は、インターンシップなどの学生と接する機会に充てられています」
内定辞退する可能性が高い学生を炙り出す際にも、AIは貢献する。
「ある企業では、フォローすべき学生を優先順位づけした結果、内定承諾率が過去と比較して200%上昇したという成果も」
万能に思えるAI選考だが、できないこともある。
「一番難しいのは、学生の志望度を向上させること。しかし、AIだと企業の魅力を伝える事はできません。この部分が今後の人事の仕事になっていきます。欲しい学生をグリップする力が今まで以上に重視され、営業に近い業務となっていくともいえます」