学生にとってもメリットは大きい。人事担当者によるアナログで感覚的な要素が排除され、公平な選考が可能となる。また、書類の内容から優秀な学生を短時間で判別できるようになるため、学歴フィルターで落とされていた学生の救済措置となりうるという。
「しかし’18年3月のHR総研の調査によると、賛成派は文系19%、理系25%と学生には2割前後しか支持されていませんでした。しかも皮肉なことに学歴の低い人のほうが否定的。機械に人生を決められるなんてという抵抗感が強いようです。しかしその点は誤解。現状はAI選考で通過できなくても、最終的には人事が判断するという企業がほとんどです」
今後さらにAI選考が進むとどのような変化が起きるのだろうか。
「現在は書類選考だけ導入している企業が多いですが、筆記試験や適性検査、自己PRなどの基本的な面接にも取り入れられると予想します。簡単な質疑応答はチャットボットが対応することも考えられますね。また就活サイトにも活用されているのが当たり前になるでしょう。すでに『マイナビ2019』ではAIが導入されており、学生の希望に企業がどの程度合っているかを提示する『納得できる企業研究』というサービスを展開しています。企業を選ぶ段階でAIを活用できれば、ミスマッチを防ぎ効率的な就職活動が可能となります」
就活ルールが廃止されるなど、就職活動の環境が揺れ動く中、AI選考が理想的な就活システムに導いてくれそうだ。
《AI選考導入による企業側のメリット》
●書類選考の効率化
●人事担当者の先入観を排除
●「社風」に合った人材を採用
●残った時間で採用者とじっくり向き合えるetc.
《各AIシステムの例》
・IBM(ワトソン)…これを導入するソフトバンクでは、新卒者の総合職志望者用エントリーシートが対象。設問2つのうちAIが選考するのは1問で、残りの1問は人事担当者が最終判断する
・SAP…ドイツのIT企業SAP社によるAIソフト「Resume Matching」は、応募者のレジュメを能力・適性順にランク付けする
・NEC…過去の入社試験受験者の合否パターンを、新規候補者が提出した履歴書と照らし合わせて判断する
酒井一樹氏
【酒井一樹氏】
株式会社エイリスト代表取締役社長。自分の頭で考え、行動する人材を増やすことを命題として就職情報サイト「就活SWOT」を開設・運営している
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