2つ目にご紹介する答弁は今年12月6日の参議院 法務委員会。技能実習生が2015~17年の3年間だけで69名も死亡という事実をどのように総括するのか、立憲民主党・有田芳生議員は総理を指名し、問うた。しかし、先に答弁に立ったのはまたしても山下法相であった。(動画の43秒~)
「えー、
ご指名ですので、お答えいたします。なぜかと言えば、これは法務省において提出した資料でございますので、その前提をしっかりと踏まえた上で総理に答弁して頂きたいと思うからでございます。そして、その集計については、これは29年11月にあ、
新たな技能実習法が施行される以前の取りまとめでございまして、(※以上の箇所、質問と無関係な背景を述べているだけなので
黄判定)
また、それに関しまして、えー、
我々しっかりと実情を把握する。そういった事で今、門山政務官を始めとするプロジェクトチームにおいて、しっかりと、あら、あのー、
把握するべく、今検討しているところでございます。我々としては新たな技能実習法について、しっかりと把握した上で対応させて頂きたいと言う風に考えております」(※以上の箇所、総理の総括を聞く有田議員の質問に法相の総括を答えており、論点をすり替えているため
赤判定)
--------------------
1段落目、またも「前提」という言葉を用いて、死亡事案一覧は「法務省が提出した資料」であること、集計は「平成29年11月以前の取りまとめ」であることなどを説明する山下法相。だが、こんなことは質問者の有田議員は当然知っており、
質問内容(69名死亡の総理の総括)とも何ら関係がない。時間稼ぎと考えざるを得ない。
また、2段落目は
論点をすり替えている(総理の総括→法相の総括)。
さらに、この山下大臣の答弁中、有田議員は「
総理に聞いているんです!」と何度も大声で抗議したが、山下法務大臣は完全に無視して一方的に答弁をまくし立てた。この異常な質疑の様子もぜひ動画(43秒~)でご確認いただきたい。
先の総裁選で安倍総理との一騎打ちに敗れた石破派から唯一の入閣を果たした山下法相。安倍内閣における山下法相の役割には、回答と関係ない内容を「前提」と称して長々と答弁して野党の質問時間を浪費させる、いわゆる汚れ仕事が含まれているように思えてならない。
<文・図版・動画作成/犬飼淳 TwitterID/
@jun21101016>
【犬飼淳氏】
サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。最近は「赤黄青で国会ウォッチ」と題して、Youtube動画で国会答弁の視覚化に取り組む。
犬飼淳氏の(
note)では数多くの答弁を「信号無視話法」などを駆使して視覚化している。また、同様にYouTubeチャンネル(
日本語版/
英語版)でも国会答弁の視覚化を行い、全世界に向けて発信している