聞いてもいない「前提」を捲し立てる安倍総理の「露払い」、山下貴司法相<短期集中連載・2018年閣僚答弁プレイバック1>

犬飼淳
山下法相

指名していないのに出てきて回答になってない答弁をする山下法相(参院インターネット中継より)

 憲政史上最悪の国会とまで言われた2018年の国会。論点をはぐらかす、時間稼ぎに終始する、事前通告がないという理由で答弁を拒否する、など与党の不誠実答弁が注目を集めた。「ご飯論法」で注目を浴びた加藤勝信・前厚生労働大臣が最も有名だが、他にも安倍内閣には個性的な面々が揃っている。2019年を迎える前にその答弁を改めて振り返りたい。  まず、第一弾は入管法改正の答弁で注目を集めた山下貴司法務大臣。検事出身のためか強気な答弁が目立ち、今年10月に初入閣を果たしたものの翌11月には不信任決議案が提出されてしまった(結果は否決)。  本記事では山下法相が頻繁に口にする「前提」という言葉に注目して、具体的に2つの答弁を見ていきたい。いつものように、答弁内容を信号機のように3色(はOK、は注意、はダメ)で直感的に視覚化していく。

抗議を無視してマシンガンのように喋り続けたデビュー戦

 山下法相が答弁デビューを果たしたのは今年11月1日。衆議院 予算委員会での入管法改正に関する質疑。衝撃的だったのは、立憲民主党・長妻昭議員に「入管法改正による外国人労働者の増加人数」を問われた際の答弁だ。(動画2分17秒~) 「えー、まず、あのー、移民ということについて、でございますけども・・、  あ、いや、それは紛れがあります。というのは、あの、国連の・・  まず、そこは明らかにしておかないと。今おっしゃってるのが、正式には法的定義がありませんと国連は言っています。そしてOECDも国連が定義するロングタームマイグラントについては広く受け入れられているものではなく適用は困難であるということを言っています。これを前提に申し上げますけれども、えー、今回の新たな、あー、受け入れ制度は深刻な人手不足に対応するため、現行の専門的、技術的分野における外国人の受入れ制度を拡充し、真に必要な業種・・、  前提を申し上げております。ぜん・・、前提を申し上げております。  真に必要な業種に限り、一定の専門性、技能を有し、即戦力となる外国人材を我が国に受け入れようとするものであります。 そして、受入れに当たっては、生産性向上や、女性、高齢者の就業促進、人手不足を踏まえた処遇の改善等の国内人材確保の取り組みを行っても、なお当該業種の存続の発展のために外国人材の受入れが必要な、あー、だと認められる業種に限って行うということになっております。(※以上の部分、質問に答えていないため判定」  で、そうした中でですね、ま、今、その即戦力となる外国人材を期限を付して我が国に受け入れようとすることについて、今、あー業所管省庁と話しながら。はい。はい? 業所管省庁と審議しながら、えー、(※以上の部分、質問の背景を述べているだけなので判定)  今後お示しできるように今精査をしているところであります。 ですから、まず、前提がそういうものである。必要なものを、真に必要なものを入れるという前提の上で、どれだけ入れるのかということを精査しているということでございます」(※以上の部分、一応は質問に回答しているので判定) -------------------- 「外国人労働者の増加見込み」を聞かれているのに、質問と全く関係ない「移民の定義」を長々と喋り続ける山下法相。長妻議員の再三にわたる「人数を聞いてるんです」という大声の抗議を完全に無視し、さらには野田聖子委員長の「大臣、簡潔に答えてください」という注意にも耳を貸さず、質問と関係ない「移民の定義」をまるでマシンガンのように2分近くもまくし立てた。  この様子は動画の2分30秒~4分14秒を実際にご覧頂きたい。いかに異常な答弁であったかご理解頂けるはずだ。  この答弁で山下法相は「前提」という言葉を5回も用い、「移民の定義」を「前提」として説明し、抗議に対して「前提を申し上げおります!」と牽制する場面も見られた。だが、この「前提」は本当に必要だったのだろうか? もし具体的な移民の人数を答えるならば、こうした前提は確かに必要かもしれない。だが、最後のわずかな青信号の回答は「どれだけ(移民を)入れるのか精査している」だけ。要約すると「今は移民の人数はわからない」だ。であれば「移民の定義」など関係ない。つまり、山下法相は「前提」という言葉を用いて、時間稼ぎをしていたと考えるしかない。さらに、後ろで腕を組んで黙って聞き入っていた麻生副総理が満足した表情で、答弁を終えた山下法相を労っている点も見逃せない。(動画の4分26秒~29秒)山下法相は始めから時間稼ぎを命じられているのではないかとさえ思える光景だ。
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総理指名でもなぜか答弁
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