五輪選手村に建設中のマンション群。駅から17分超、不便なBRT、清掃工場が近いなどの課題はあるが、相場より10%安く売りに出そうだ
一方、湾岸エリアのマンション事情に詳しい人気ブロガーののらえもん氏は「日本における今世紀最大級の住宅開発になる。しかも東京湾に囲まれ、眺望に優れた場所で。今、住みたいマンションの筆頭です」と胸を躍らせる。
「専有面積帯で最も多いのは85㎡台で、間取りは3LDK~4LDKと広い。私は相場より10%ほど安く、坪300万円未満で売りに出ると試算しています。7000万円台の物件が多いと予想されますが、安いものだと『3LDK5800万円~』といった物件も出てくるかもしれません」
ただし、もろ手を挙げて「買い」かというとそうではない。沖氏は次のように指摘する。
「まず、駅から徒歩17分と遠い。清掃工場が近いことや塩害も気になります。また、いくら周辺相場より割安といっても総額7000万円台の物件となると、住宅ローンを組むのに世帯年収で700万~1000万円は必要になります」
煙突は周囲の景観と調和させたデザインとなっているが、選手村建設地のすぐ目の前には中央清掃工場が立っている
駅から遠いエリアのため、住民の足として期待されているのが「BRT」(バス高速輸送システム)だ。BRTとは道路上の専用レーンや専用道路を走るバスのこと。運行の遅れが少なく、通常の路線バスよりも多くの乗客を効率よく輸送できるという特徴がある。
「ただし、現在予定されている輸送力では鉄道の代替手段とはなりません。もっと本数が増えて利便性がよくなるか、もしくは中央区が旗振り役の『都心部・臨海地域地下鉄構想』に期待したいですね。また、販売は’19年5月からですが、入居は’23年。これからの5年で無料タクシーやシェアリングタクシー、自動運転バスが普及するかも。晴海エリアの移動は新技術が解決するかもしれませんね」(のらえもん氏)
期待は高まるが、懸念事項は多い。東京都が周辺相場の1割以下で“投げ売り”したことを問題視し、小池百合子東京都知事を被告として住民訴訟も起きている。
そして、相場よりも安く売りに出されると、マンション価格の相場が崩れるのではないか、という指摘もある。
ただし沖氏は、「この10年の中央区における平均着工戸数は年間2000戸強。’19~’23年で徐々に売っていくのであれば、大きな値崩れは起きないでしょう」とみる。のらえもん氏も「近隣の新築マンションには影響が出るかもしれませんが、近年のマンションは値上げ競争ばかりだったのだから、たまには安いほうの価格競争があってもいい」と話す。
駅から遠く、広めの間取りの物件が大量に供給される選手村マンション。今どきの売れ筋物件とは異なるが、「中央区」というアドレスで相場よりも安く売りに出されれば、狙い目物件となるかもしれない。「ここ、錦織圭が住んでいた部屋なんですよ」なんて言われたら、プレミアム感が出るかも!?
【沖 有人氏】
不動産ビッグデータを駆使した調査・コンサルティングを行うスタイルアクト代表取締役。
www.sumai-surfin.com/
【のらえもん氏】
湾岸タワーマンションを購入し、湾岸エリアの不動産事情に精通する人気ブロガー。ツイッターは
@Tokyo_of_Tokyo
― 五輪選手村[格安マンション]を狙え! ―