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11月17日にフランスのパリで始まったデモは全土に広がり、終息の見通しが見えない。デモで国民が最初に訴えたのは「燃料税の引き上げに反対」であったが、これは不満の一部に過ぎず、本質的にはマクロン大統領の経済政策に国民が強硬に反対しているのだ。
マクロンの経済改革は、典型的な新自由主義政策(グローバリズム)であって、「法人税を33%から25%へ引き下げる」「富裕税を廃止する(減税)」「年金所得者、低所得者にも課税する」「経営者が労働者を解雇しやすくするために労働法を改訂する」などだ。こうなると「低所得者から富裕層と大企業に所得が移転し」「企業ではリストラが進む」ことになる。
マクロンの政策は、英国のEU離脱や米国のトランプ当選で発揮された反グローバリズムの潮流に逆らっている。18世紀末に自由・平等・博愛の理念を掲げて国民を苦しめてきた王政を打倒したフランス国民の血統は今日でも不断に流れており、フランス全土に広がっているデモはフランス国民の反グローバリズム行動の表れである。デモを沈静させるのは増税・リストラ法案の撤廃が必要であろう。
新自由主義とは「国富を1%の富裕層と大企業に集約すれば、彼らの投資と消費が増えるので経済が成長する」「そのためには社会保障費は最低限に抑え、労働法を改訂して解雇を自由にし、賃金を極力圧縮する」という考え方(イデオロギー)であり、最初にこの政策を取り入れたのが1979年からの英国のサッチャー首相と1981年に就任した米国のレーガン大統領であった。
その結果、両国ともに財政赤字は拡大し、国民の所得格差が拡大して社会が分断され、米国は債務国に転落して国家が危機的な状況になってしまった。英国のEU離脱と米国のトランプの大統領就任は、こうした新自由主義の流れを国民が直接投票で変えようとした行動の結果である。