日本で新自由主義を取り入れたのは2001年4月に就任した小泉純一郎首相であり、小さい政府、規制緩和、社会保障費圧縮などの構造改革を進めた。構造改革で貧しくなってゆくことに気が付いた国民は、新自由主義政策からの脱皮を期待して2009年9月に政権交代を実現させ、民主・国民・社民の連立政権に期待した。
ところが野田佳彦氏が首相になると、「4年間は消費税を上げない」という選挙中の国民との約束を破り、自民・公明と三党合意を実現させて、「消費税を10%に引き上げて法人税を5%下げる」という典型的な新自由主義政策を取り入れた。
2012年12月の選挙で政権に復帰した自民党の安倍首相は、「(法人税の最高税率を25%に引き下げたうえでさらに)地方税を含む実行法人税を現行の36%から29%台に下げる」「日本を企業が最も儲けやすい国にする」「人件費を1割、削減する(経団連の要求)」「規制緩和を徹底して生活基盤まで破壊する」「金融を超緩和状態にする」という政策を採っている。その結果、日本はどうなっているのか。
厚労省のデータによれば、2013年から2017年までの実質所得(1世帯当たりの平均所得額)は5年で80万円減収(年収で16万円の減収)となった。内訳をみると、消費税3%の増税(これで消費者物価は2%上昇する)による減収は5年で60万円(年収で12万円)となり、残りの20万円(年収で4万円)は円安に輸入物価高によるものである。
さらにこの5年間で雇用者数は370万人増加したが、正規社員は26%の増加に過ぎず、非正会社員が73%も増加し、雇用は不安定化している。同期間の名目GDPは492兆円から546兆円に52兆円増加しているが、32兆円は計算方法を変えた底上げであって、実態は5年間でわずか20兆円(年成長率0.8%)の増加に過ぎない。さらに安倍内閣は海外から労働力を導入して日本人の所得を抑えようとしている。
一方、上場企業の2017年度の役員報酬合計は、2010年度と比べて31%も増加している(東京商工リサーチ調査)。
このように日本国民の所得を低く抑えて大企業を儲けさせ、その利益は株主配当と役員報酬、内部留保になっており、国民の実質所得の伸びはマイナスである。
なぜ日本国民はこうした暴挙を黙認しているのか。フランス国民に馬鹿にされないためには、選挙でこの悪政を変えさせることではないか。奮起せよ日本国民!
<文/菊池英博>
エコノミスト。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)を経て1995年文京女子大学教授に。現在は日本金融財政研究所所長
提供元/月刊日本編集部
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