Kリーグ、シンガポールリーグでの思い出を聞いた(戸田和幸オフィシャルブログより)
2002年日韓W杯で活躍し、今は解説者として活動する元サッカー日本代表・戸田和幸を直撃する本シリーズ。
「韓国のこと、聞いていいですか?」筆者がおそるおそる切り出すと、「全然いいですよ」と戸田はあっさり答えてくれた。
筆者がこの質問で緊張したのは、昨今の日韓関係が悪くなっているから、ではない。
これまで「ハーバービジネスオンライン」でタイや中国サッカーについて記事を執筆してきが、韓国にも取材に行った。そして、意に沿わぬ形で韓国二部のチームに飛ばされ、全く現地にもチームにもなじめない選手の愚痴に四時間付き合った経験があるからだ。
実際、5万人のハコに150人以下という観客動員を見たときには心底ゾッとした。全くリーグ運営・クラブ経営がなっていない証拠である。
筆者が知る限り、日本から韓国に行って結果を出せたといえるのは高萩洋次郎と鄭大世だけだ。選手生活最後の「年金リーグ」と割り切れる場合は別として、たとえ日韓関係が良くなったとしてもサッカー選手は韓国リーグに行ってはならない、というのが筆者の持論である。
これまで二回にわたり語っていただいている戸田和幸も、韓国リーグを経験している。だが、戸田の著書「解説者の流儀」では、韓国のことは一行で片付けられている。
「3月に入り、僕は韓国Kリーグの慶南FCと契約を交わす。そこで1年プレーし……」
だから筆者は、戸田にとって韓国の一年は触れられたくない、封印してしまいたい「汚点」なのではないかと心配しながら冒頭の質問を発したわけだ。
「いや、韓国の一年は全然イヤな思い出ではありませんよ。本を出す上で重要な事ではなかったので省いただけです。韓国南東部の山の麓にある寮での合宿生活でしたが、一年間ひたすらサッカー漬けの一年でした。たまに選手何人かと連れ立って近くの町まで韓国料理を食べに出かけたり、雰囲気も全然悪くありませんでしたね。
そのとき一緒にいたブラジル人選手が、実は今柏レイソルの選手に付いて仕事をしているそうで、近く再会の予定です」
いい話ではないか。
ジャーナリストは戦争を始めるが、
フットボーラーは絆を作ることができるのである。短編小説の一つも書けそうなところだ。