三菱重工が、「H3」ロケット打ち上げを英民間企業から初受注できたワケ

三菱重工の商業打ち上げ

 三菱重工は2007年に、JAXAからH-IIAの打ち上げ業務を移管され、商業打ち上げ受注業務を開始した。前述のように、H-IIAは他の競合ロケットと比べて割高とされること、また打ち上げの実績が少なかったこともあり、当初はなかなか受注が得られなかった。  しかし、2009年に韓国から地球観測衛星の打ち上げを受注、2013年にはカナダの衛星通信会社から通信衛星の打ち上げを受注し、ともに打ち上げに成功している。  さらに2015年には、アラブ首長国連邦ドバイから地球観測衛星の打ち上げを受注し、今年10月に打ち上げに成功。さらに2016年には、同国から火星探査機の打ち上げも受注している(2020年打ち上げ予定)。  そして2017年には、英国の衛星通信会社インマルサットから打ち上げを受注。H-IIAロケットにより、2020年に打ち上げが予定されている。  そして今回、この契約に続く、インマルサットから2件目、また海外顧客から6件目となる打ち上げを受注した。特筆すべきは、打ち上げに使われるのがH3ロケットという点で、同機にとって初の民間企業からの打ち上げ受注となった。打ち上げは2022年以降に予定されている。なお、受注額は明らかになっていない。  インマルサットは、衛星通信、とくに移動体衛星通信サービス提供において世界を代表する企業で、世界最大級の衛星ネットワークを所有、運用している。そのインマルサットから2件も受注を獲得できたことは、同社の三菱重工に対する信頼の表れといえよう。
調印式

三菱重工 宇宙事業部長の渥美正博氏(左)と、インマルサットのルパート・パースCEO(右)による調印式の様子 (C) MHI

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なぜ打ち上げを受注できたのか?
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