戊辰戦争150年、新政府軍に最後まで抵抗した会津藩のその後の“苦しみ”とは!?

上陸の地

新潟からの船便の上陸の地となった大湊の「斗南藩士上陸之地」碑

「戊辰戦争は明確な侵略戦争。民に塗炭の苦しみを与えることが分かっていて、なぜ推し進めたのか理解できない」と憤るのは会津松平家14代当主の松平保久(もりひさ)氏だ。  10月21日に会津大学(福島県会津若松市)で開催された、明治維新ならぬ「戊辰150年」に合わせた歴史文化講演会「戊辰戦争 会津藩と徳川幕府」でのパネル討論でのこと。このパネル討論には会津・庄内両藩や奥羽越列藩同盟で主力を担った各藩の当主が出席し「戊辰戦争が新政府軍の『大義なき侵略』を目的に行われた」と指摘した。

28万石から3万石に転落、会津から下北半島への移住

上陸の地 解説 会津藩と(福島県)といえば戊辰戦争時の少年20人が飯盛山で自刃した白虎隊の悲劇が有名だが、150年経っても薩摩や長州を中心とする新政府軍・明治政府への不信感を募らせるのは理由がある。その一端が分かるのは『斗南藩』(星亮一著・中公新書)だ。 「会津藩士一同は朝敵として処罰され、上越高田や東京の寺院などに分散収容されていたが、明治二年(一八六九)十一月、お家再興がなり、旧南部藩の地である下北半島を中心とする金田一(現岩手県二戸市)以北の(略)支配を命ぜられ、斗南藩として再興した。だが、比較的豊かな七戸藩、八戸藩の領土は除かれ、野辺地や田名部を除けば、いずこも凍餒蛮野の不毛の地だった。斗南の領地は稗を主とする雑穀しかとれなかった。これは明治政府に歯向かえば、こうするという見せしめの処分だった」(『斗南藩』)  敗れた会津藩は、明治新政府により藩主・松平容保(かたもり)の子であり、生後間もない松平容大(かたはる)を藩主としての再興が許された。しかし下北半島を中心とする地域に、斗南(となみ)藩と改名して移住すること引き換えだ(領地替え)。  それは28万石の雄藩から、3万石の小藩への転落を意味する。1870年(明治3年)、外国船による船便と陸路に分けて、総数約1万7000人が移住した。彼らを待っていたのは、ほとんどが耕地に乏しい不毛の地(当時は)での過酷な生活だった。 「冬になると炉に焚火をしても陸奥湾から吹きつける寒風が部屋を吹き抜け、部屋は氷点下十度から二十度の寒さだった。(略)幼児や老人は飢えと寒さで、次々に息を引き取った」(『斗南藩』)
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明治期に、旧会津藩出身者が全国で活躍した理由
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