EU=白人のキリスト教国集合体はむしろ閉鎖的で人種差別的
――フランスには左派にも右派にもEU懐疑派がいますね。
アスリノ:しかし、他の政党はEUの改革を掲げているに過ぎません。極右政党である「国民連合(旧国民戦線)」のマリーヌ=ルペン党首も、「立ち上がれフランス」のニコラ=デュポン=エニャン党首も、今ではEU離脱を公約から外しています。EUの存在自体を疑問視していて、EUからの離脱、つまりフレグジットを公約しているのは我が党だけです。
EUは機能不全に陥っている。「出るしかない」というのが私の主張です。欧州統合のプロジェクトはそもそも実現不可能でした。言語や宗教、経済が異なる28か国を統治するには、各国の利益に合わず、市民が望まない政策を押しつけるという反民主的で独裁的な手法にならざるを得ない。
つまり、ブリュッセル官僚がEUの実権を握り、市民が望みもしない政策を押しつけてくるのです。フランスはアフリカ諸国などとグローバルな関係を築いてきたのに、白人のキリスト教国が集まるのは閉鎖的で人種差別的とも言えますね。
さらに、仏独の和解で欧州の平和が保たれてきたと皆が言いますが、21世紀の今日、対独戦争はあり得ません。逆に欧州が一つにまとまることで、中東やロシアとの亀裂が生まれているのが現状です。
――それにしても、なぜにEUからの離脱・フレグジットなのでしょう。
アスリノ:経済学者ジャック=サピールの試算をもとにすると、ユーロからの離脱はもっとも有効な経済再興策です。同時にきわめて有効な失業対策であるのです。理由を説明しましょう。ユーロからの離脱によって独自通貨が発行でき、フランスが自由な通貨政策を取ることが可能となれば、現在ある400万人規模の失業者を200万人以下に減らすことができるのです。
アベノミクスが異次元の金融緩和をやったように、フランスでも通貨発行権を取り戻して金融緩和し、刷ったお金で財政出動して失業対策や社会保障にお金をまわせばよいのです。ユーロ圏は対GDP比の3%以下しか赤字国債を発行できない。金融緩和もフランス独自には出来ない。EUにいる限り、緊縮財政・増税路線にならざるを得ないのです。だからこそフレグジットなのです。