「欧米人のNGしぐさに気をつけよう」とは言うけれど……
しぐさを扱う書籍のもう一つの流れは、外国人、と言っても主に欧米系の方々のしぐさを紹介し、私たち日本人に「欧米圏で誤解されるしぐさや失礼なしぐさをしないように」と諭すものです。英語に習熟してればいるほど、その国のしぐさにも習熟する必要があると私は考えます。
英語がペラペラだと、母国人と同様に感じます。外国人のようには思えなくなります。そうであるからこそ変なしぐさが鼻についてくるのです。逆の立場で想像してみましょう。例えば、日本語片言の外国人男性の方が、挨拶として頬にキスをしてきました(私が体験した実例です)。この行為に驚きはしますが、「ああ、日本文化はまだわからないのね。」と許容できます。しかし、日本語ペラペラな外国人が同じことをしたら違和感を抱くでしょう。共通項が増えるほど、違いが目立ってしまうのです。
私たち多くの日本人は英語がペラペラではありません。したがって、言葉だってしぐさだって間違えてもよいと思います。欧米人と日本人とのしぐさの違いをことさら強調して、注意を促されてしまうことで、欧米人とのコミュニケーションに消極的になってしまったり、ややもすれば卑屈になったりすることもあるでしょう。それでは本末転倒です。そうは言っても、しぐさは言葉をサポートしたり、言外の意味を伝えたりする大切な働きを持っているため、コミュニケーションにおいて完全に無視してよいというわけではありません。
こうした状況にどう対応したらよいのでしょうか?私の答えは、「万国共通のしぐさを学べばよい。」ということです。万国共通のしぐさを学べば、全日本人は言うまでもなく、全世界の外国人の言外に現れる想いを汲み取ることが出来るようになるからです。
それでは次回、いよいよ万国共通のしぐさの種類とその活用法を紹介したいと思います。
【清水建二】
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『
ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『
「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『
0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。