スペイン・アンダルシア自治州議選で極右が初議席。その背景と波乱が予想される今後

白石和幸

VOX党首のサンチアゴ・アバスカルは1974年生まれ。 photo by Contando Estrelas via flickr(CC BY-SA 2.0)

 12月2日に行われたスペイン・アンダルシア自治州の州議会選挙で極右「Vox」が初めて議席を獲得したことがヨーロッパで注目を集めている。スペインでも全国の州議会レベルで初めて極右が議席を獲得したということで、スペインの次期総選挙でVoxがスペイン上下院に登場する前触れであるかのように一般に受け止められているが、すでに今回の選挙結果から、スペイン上院の規定から総選挙を待たずにVoxに議席がひとつ与えられることになっている。(参照:「El Diario」)

 12議席を獲得するという快挙を成し遂げた極右政党「Vox」は2014年に創設された政党である。リーダーのサンチアゴ・アバスカルはラホイ前首相の国民党(Partido Popular)の党員だった。
 国民党はフランコ独裁時代に大臣を務めて民主化になっても議席を保っていたフラガ・イリバルネが起こした国民同盟(Alianza Popular)がその前身である。国民党の党員の裾野は広くフランコの支持派(極右とされている)から中道右派までが幅広く集まった政党であった。ところが、ラホイ前首相がカタルーニャ州の独立の動きに対し強硬な姿勢を見せなかったことや、欧州連合からの指示には従う一方で、国民を犠牲にした。違法移民への取り組みにも明確な姿勢を示さないでいた。ラホイ前首相のこのような優柔不断さに、国民党の中でも極右派が反発して分離してできた政党が「Vox」である。同じ国民党出身のイラク戦争にスペインを介入させた強硬派のアズナール元首相はVoxの誕生を当然だと見ている。
 Voxは以下のような考えをもっている、明確な極右政党である。

・自治州政治を廃止して中央集権体制に復帰すること
・カタルーニャの独立支持政党の違法化
・公用語スペイン語を全国レベルで普及させ、カタラン語などを教育の場から廃止
・シェンゲン協定(欧州の国家間で国境検査なしで越境を許可する協定)の廃止
・イスラム寺院の閉鎖
・移民は言語など共通の文化をもったラテンアメリカからの移民を優先し、それ以外の不法移民は一生スペインでは合法化させない
・同性愛の否認
・20歳になって徴兵制の義務化
・北アフリカのスペイン自治都市セウタとメリーリャに壁を設ける

(参照:「El Pais」「El Espanol」「El Periodico」「Geceta」)

 有権者数は650万人のアンダルシア州で今回の投票率は58.65%。Voxは39万5978票を手に入れて12議席を獲得したのであるが、今回Voxに投票したおよそ40万人がVoxの前述した政策網領に同調しているとは思えないというのが一般そしてメディアの考えである。この票には不法移民の急増で職場を失った人が現政府に反発する意味でVoxに投票した人も多くいると見られている。

 ちなみに、社会労働党は100万9243票を獲得して33議席を確保したが、いつも同党に投票する有権者のおよそ40万人が棄権したということも明らかになっている。なぜ、投票所に向かわなかったのかその調査も進められているという。(参照:「El Confidencial」)

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アンダルシア州議会の政治的背景
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