事実、彼女は身近にいる仲間たちからも「日本での中国・中国人に対する悪いイメージ」に悩み暮らす様子をよく耳にしていたという。
友人の子供たちは、学校でいじめに遭わぬために日本語しか話さないように育ててきたため、もう中国語を話せないのだそう。また、Ayaさん自身も開業時店舗を借りるのに「中国人だから」という理由でなかなか契約に結びつかなかった体験があったという。そして現在Ayaさんのもとで働く社員の一人も、前職の頃日本人上司から度々冷たい対応をされ続けて苦しい日々を過ごしていたという。
「20年前に日本に来た中国人、10年前に来た人、5年前に来た人。時期によってその感覚も全然違います。昔は日中の経済格差が大きくて、日本に来る中国人は借金を背負ってまで日本に来て、出稼ぎをするという人も少なくありませんでした。とにかくお金を稼ぐことが主目的で、違法行為に手を染める人もいました。
しかし、今中国から日本に来る人は、単純に仕事をするなら中国のほうが賃金がいいことも増えて、出稼ぎ的な人は減りました。いまは日本のカルチャーに興味があるとか、アメリカやヨーロッパに留学するのはちょっとお金が足りないけど留学はできるくらいの若い中国人が、バイトしながら勉強できるということで日本を選んで来るようになっています。
私自身も、ビジネスをしていますが、ただおカネを稼ぐのではなく、それでどうすれば社会貢献できるか? 自分の価値を高められるかを常に考えていますが、日本に来る中国人の若い人の意識は昔とは変わっています。
ただ、中国にはゴミの分別などがまだそこまで厳密でないこともあり、『知らない』ためにできない。すると悪いイメージが変わらない。
そんな中、私が微信などでこうしたゴミ拾い活動を始めて呼びかけることで、在日中国人の間に意識変化のきっかけになると思って始めました」
微信(Wechat。中国製のメッセンジャーアプリ)で「绮丽西川口维护小分队(綺麗西川口維持小分隊)」というグループを作成、手袋・ゴミ袋・マスク・トングは四川麻辣烫で用意するので、気軽に身一つで集まってください、という呼びかけだ。
開催頻度は、月一回、毎月第一土曜日。清掃時間はおよそ一時間ほど行われている。
「最初は私一人でしたね(笑)。今もそんなに多く参加してくれるわけじゃないけど、朝9時からのスタートを16時に変えたら少しずつ来てくれる人も出てきました。街を綺麗にすることも大きな目的の一つではあるんですけど、中国人がまず『こういうことをしてる中国人がいる』ことを知ってくれて、この活動を良い活動だと認識してくれることがまず進歩だと思ってます。
参加者はほとんど微信のグループを見て来る人や、私の友人が中心です。ただ、近隣の中華料理店を営む中国人からも『「活動は実に素晴らしい。だがちょっと恥ずかしくて参加に至っていない」という声があります。
あとは、参加できない人は、自分がポイ捨てしたり自分の居住区のゴミ捨てマナーを守ってくれるようになってくれたら、それも進歩。
これまで長い時間を経て根付いてしまった中国人への悪しきイメージは、同じように時間をかけてでも、こうして少しずつひとりひとりの意識を変えていくことを積み重ねることでしか変えられない。だからわたしは続けます」