AIで代替が効かない「説得」術は、3つのポイントを押さえて磨け

山本マサヤ

聞き手の共感を得るためのポイントとは

エトス(信頼)

 エトスとは「信頼できるような人柄かどうか?」ということだ。相手を説得するときは、相手に信頼してもらえるようにさまざまなところに気をつける必要がある。

 たとえば、服装、表情、仕草、持ち物、人当たり、性格などの観点から、相手の信頼を得れるよう気をつける必要がある。

 また、このエトスはほかの2つに比べてもっとも強力な武器だともアリストテレスは述べている。

 心理学のテクニックで「ハロー効果」というものがこの技術の効果を裏づけている。ハロー効果とはひとつの突出した特徴があると、ほかの特徴の評価も、その突出した評価に引きずられて高くなるというものだ。エトスはこのことを指しているのだろう。

 また、人間の第一印象は多くの場合において、外見で決まり、その印象を変えるのには長い時間と多くの労力がかかる。

 知人のある外資系保険会社のトップ営業マンは、部下に「外見には一番気をつけろ」と指導をしている。優秀な保険営業や優秀な外資系コンサルタントの方々は高級なスーツに身を包み、髪型をしっかり決めているのも「この人にお願いしても大丈夫そうだ」という印象を持ってもらうためなのだろう。

パトス(感情)

 パトスとは「聞き手の感情」である。人は自分の感情次第で意見を変えてしまう場合がある。相手が穏やかなときには説得できた内容でも、相手が不機嫌なときに同じ提案を持っていっても断られてしまう場合がある。

 そのため、相手の感情を自分に有利になるように誘導する必要がある。

 相手の感情を分析して、相手が乗り気じゃないときは、アイスブレイクを挟みながら相手の感情を誘導するほうが効果的だ。

 反対にアイスブレイクではなく熱量を込めたプレゼンを行なって、相手の感情を引っ張ることも有効である。

 多くの人の感情をコントロールしていた一例として、ヒトラーの演説は熱量に溢れており、その演説の技術は群衆の感情を束ねてひとつの方向に向けていた。このことを、社会心理学者のギュスターヴ・ル・ボンは『群衆の精神的統一の心理法則』と名付けている。

 日本人のプレゼンでは、温度の高低が少ない人が多い印象を受ける。つまり、資料の文字を棒読みするだけ人が多いということだ。そういう場合は、眠気を誘うし、その人の本気度が伝わってこない。

 政治家で例えるなら、小泉進次郎氏の街頭演説は熱量に溢れている。その要素も有権者の心を動かしているひとつなのではないだろうか。熱量という「パトス」を営業やプレゼンに活用してみてほしい。

ロゴス(論理)

 ロゴスとは「説得する内容が論理的に構成されているか?」ということである。論理的とは、「説明に漏れがないか?」や「筋道が通っているか?」ということだ。

 言われてみれば当たり前のことだが、最低限気をつけるべきこととして、心にとどめておく必要がある。

 説得をする過程で論理に穴があると、相手がつまづいてしまい、せっかく準備した資料や時間が無駄になってしまう。

 相手が理解しやすいよう、「3段論法」や「起承転結」、「演繹法」などのフレームワークを活用して論理的な文章を作ることが重要である。

 いかがだっただろうか。エトス(信頼)、パトス(感情)、ロゴス(論理)は人を説得するために効果的なテクニックである。

 自身の営業シナリオや日常生活を振り返ってみて、上記の3つがどれだけ満たせているか確認し、どれを足す必要があるのか振り返ってみてほしい。そして、来るべきAI社会でも生き残れるような、人間が得意とする領域のスキルを身につけていただきたい。

【参考資料】
『日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に』野村総合研究所
『弁論術』アリストテレス
『群衆心理』ギュスターヴ・ル・ボン

【山本マサヤ】
株式会社Infinite Innovation代表取締役。心理戦略コンサルタント。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催。これまで数百人に対して仕事やプライベートで使える心理学のテクニックについてレクチャーしてきた。また、メンタリズムという心理学とマジックを融合した心理誘導や読心術のエンターテインメントショーも行う。クラウドワークスの「トップランナー100人」、Amebaが認定する芸能人・著名インフルエンサー100人に選出

公式ホームページ:https://masayamamoto.com
Twitter:@3m_masaya
Instagram:@masaya_mentalist

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