水道事業に民間参入を促そうしているのは誰なのか。内閣府PFI推進室を巡る利権の構造

内田聖子

PFI法が推進する「コンセッション契約」

 今回の水道法改正に「コンセッション導入」推進が盛り込まれた背景には、PFI法の側からの推進施策がある。その際のキーワードは「成長戦略」である。今まで民間が参入しづらかった水道など公共サービスに民間の投資を促し、儲かるビジネスとして市場化することで、財政難に苦しむ自治体側にもメリットがある。そして経済成長が可能となる、というものだ。

 そんな魔法のような話があるのだろうか? 人口も減って儲かりそうもない自治体に、利潤を追求する企業が本当にどんどん投資をするのだろうか? と多くの人がすでに気づいているだろう。確かに、難しい話なのである。

 PFIの手法は、民営化の本家とも言えるイギリスにて、「完全民営化」よりも多少公共の関与が強いスキームとして1992年頃に開発された。日本では1999年7月からPFI法が施行されている。しかし当初は限られた施設だけが対象であり、政府が期待していたほどの民間参入件数は伸びてこなかった。そこで政府は年々、PFIの対象を拡大し、法改正も重ねながら、様々なインセンティブをつけていく。その中で、官民連携の様々な方式も取り入れられ、2011年の法改正で、現在水道法で問題となっているコンセッション契約がPFI法の下で可能となったのだ。言い換えれば、政府はすでに2011年の時点から、「水道を民間事業者の手に」というシナリオを着実に描いていたのである。

 2017年12月には、強力なコンセッション導入に向けた指針が自治体に提示される。「多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針」が出され、原則として(1)10億円以上の建設を伴う事業、(2)単年度事業費が1億円以上の運営・維持管理事業は、従来型の手法の検討よりも、PPP/PFI手法の導入が適切か否かの検討を優先して行うべき、ということが定められた。しかも、「PPP/PFIの方がトータルコストが安い場合は、外部コンサルタントを起用しなければならない」、「PPP/PFIを導入しない場合には、その旨及び評価の内容をインターネットで公表する」なども定められるなど、事実上、自治体の自主的・自律的判断が歪められるような内容も盛り込まれていたのだ。

 本来、民間にとって魅力的な投資先であれば、政府が政策的に介入する必要もなく、市場原理に任せていれば投資はなされるはずである。しかしどうやら政府の描いたシナリオのようには自治体も民間企業も動いていかない。だから、ここまで国が介入して、多額の税金をつぎ込みながら、民間企業が水道事業に参入するように促しているのである。こうした半ば無理やり行われている水道への民間参入とは、いったい誰のためなのだろうか?

 現在審議されている水道法改正の背景には、こうした長年にわたる政府のPFI推進政策があるという事実を、私たちはまず知るべきであろう。そして、この流れを推進してきたのが、政府(内閣府)とコンサル企業、ヴェオリアなどの水企業という3者の共同体なのである。

 水道法が改正されなかったとしても、PFIコンセッションの流れはすでに多数の自治体で動いている。何度も触れたが、浜松市では2018年4月から、下水道のコンセッションを実施中だ。宮城県なども続いていくだろう。さらに厚労省は、2017年2月の水道コンセッション導入促進方針で、「トップセールス」のリストと称するものを示し、大阪市・奈良市・広島県・橋本市・紀の川市・ニセコ町・浜松市・大津市・宇都宮市・さいたま市・柏市・横浜市・岐阜市・岡崎市・三重県・四日市市・京都府・熊本市・宮崎市への働きかけをあげた。これらには水道事業が赤字経営でない自治体も含まれている。政府は優良自治体の水道さえも民間資本へ売り出そうとしているのである。

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英国では「PFIは失敗」と断定
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