水道事業に民間参入を促そうしているのは誰なのか。内閣府PFI推進室を巡る利権の構造

内田聖子

ヴェオリア社とPFI/PPP推進室のさらなる関係?

 もう一つ、PPP/PFI推進室とヴェオリア社の「関係」については別の話題もある。すでに週刊誌報道等もなされているが、内閣府大臣補佐官・福田隆之氏が、先で述べた2016年の「海外調査」として出かけたフランスにて「ヴェオリア社から過剰な接待を受けていた」「公費出張に元同僚の女性を誘った」などと書かれた怪文書が内閣府内に出回ったという一件(参照:日刊ゲンダイ)である。
 福田氏も民間企業から政府に引き抜かれた人物だ。野村総合研究所にて、国が実施する初のPFI案件を手掛け、防衛省・大阪府・新潟県・道路公団等へのPFI・民営化アドバイザリー業務の他、民間企業のPFI事業の参入支援を行ってきた。2012年3月からは、コンサルタント企業の新日本有限責任監査法人にてインフラPPP支援室長として、仙台空港案件をはじめとするコンセッション関連アドバイザリー業務を統括。まさに「PFI・PPPの推進役」と言ってもいいだろう。若干36歳(当時)の福田氏を内閣府の現ポストに抜擢したのは菅官房長官であるという。その背後には、竹中平蔵氏の強い推進もあったことも知られている。

変わる日本のロビイング

 このように、特定の政策の推進によって利益を得られる企業から政府職員に「転職」としている、という実態について驚く方も多いかもしれない。

 欧米ではこれは「回転ドア人事」と呼ばれ、民間企業の人間が政府の要職に転職することは当たり前のように行われている。米国では政権が変わると何千人というホワイトハウスのスタッフが交代するのも、こうした文化の一端だ。例えば貿易交渉において製薬会社のトップだった人間が知的財産分野の交渉担当官に転職したり、あるいは遺伝子組み換え食品のメーカーの重要人物がFDA(食品医薬品局)に転職し、食品の安全基準を緩和するというケースなどがある。企業出身者はビジネス経験や人脈を最大限に使い、自らが属する企業や業界とって有利な政策を導入することも極めて広く知られている。しかし国民の側からすれば、食の安全・安心や医薬品など公共性の高い分野において、大企業に有利な政策が密かにつくられていくという危険がある。欧米市民社会はこうしたロビイストたちの動向を厳しくチェックしている。

 これまで日本ではこうしたあからさまなロビイ活動は見られず、官僚経験者が退職時に大企業や関連組織に再就職する「天下り」というスタイルが一般的だった。しかしこの10年ほどの間で、欧米型の「回転ドア」が徐々に広がっている。特に内閣府・内閣官房には首相直轄の案件が多く、各省庁の利権や利害を超えたところで、強いイニシアティブによって特定の政策が推進されることが常態化しているようだ。内閣府・内閣官房と民間企業の間に、「回転ドア」がつくられ、本来は国民の暮らしや国全体の利益を優先してつくられるべき公共政策が、企業と一部の人間の利益のために歪められていると筆者は分析している。今回の水道コンセッションをめぐる一連の問題も、その氷山の一角ではないだろうか。

次のページ 
PFI推進委員が所属するコンサル企業が調査を受注
1
2
3
4
5
6
ドキュメンタリー映画『最後の一滴まで―ヨーロッパの隠された水戦争』 2018年/日本語版制作:NPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)/59分 本体価格:3,000円+税(図書館価格:本体10,000円+税) 詳細・お申込 http://www.parc-jp.org/video/sakuhin/uptothelastdrop.html
4
5
関連記事
6
7