「攻撃してもよい空気」を作る政治家発言。民主主義を殺す民主主義の脆弱性とは?

日本国内に広がる「攻撃してもよい」雰囲気

 日本の現政権は、野党および批判者に対してこれまでは考えられなかったような発言(基本的人権の尊重など民主主義の基本の否定、ヘイトスピーチ、フェイクニュース)を繰り返している。それらは、非常にわかりやすく断定的であるため、一般市民がそれをなぞって同じ相手を攻撃しやすい。しかも論理的ではなく、感情的であり、時には間違っていることもある。それでも責任をとらされることもない。これは一般の国民や団体が同種の発言を行うことへの暗黙の承認、支援となっている。  拙著『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)では、下記のような例を紹介した。全体図も合わせて参照していただくとわかりやすい。 ・2017年衆院選において、憲法改正の必要性を訴えるために自民党の安倍晋三首相は「ほとんどの教科書に自衛隊が違憲であるという記述がある」と盛んにアピールしていた。この件についてバズフィード・ジャパンは2017年衆院選の検証企画の一環として、文科省教科書課に問合せを行い、「事実関係として、自衛隊が違憲であると断定的に書いた教科書はありません」という回答を得、さらに中学校の全ての「公民」の教科書(七社)を読んで確認している。(参照:【検証】安倍首相「ほとんどの教科書に自衛隊が違憲と記述」は本当か -BuzzFeed News)  この他にも『【検証】立憲民主党Twitter「フォロワーを購入」は本当か? 急成長で自民党を抜いたけれど…』(根拠なし 2018年10月6日)、『【検証】立憲民主党のツイートを拡散したのは買われた偽アカウントか』(誤情報 2017年10月8日)といった検証記事がある。 『なぜ日本では差別がひどいのか?(WHY IS RACISM SO BIG IN JAPAN?)』(2017年12月9日、South China Morning Post)という記事では、化粧品会社ポーラの店舗が「中国の方出入り禁止」と貼り紙をしたことや、小説家・曽野綾子が産経新聞に寄稿したコラムで南アフリカのアパルトヘイト政策を支持するような発言をしたこと、政治家の稲田朋美とヘイトスピーチを繰り返している「在日特権を許さない市民の会」(在特会)が近しい関係にあることなどをあげていた。  こうした事例の背後には、保守系、右寄りの過激な発言はカネにしやすいという事情が見え隠れする。そのメカニズムについては長くなるので割愛するが、意図的に仕組まれたものと考えられる。一部では「攻撃してもよい」どころか、「攻撃すると儲かる」になっているのだ。  また、書類の改竄、政治家の発言の誤りなどは枚挙にいとまがなく、「攻撃してもよい」空気の醸成されやすさは悪化の一途である。  これらが「攻撃してもよい」雰囲気を作り出していると考えられ、相互的寛容や組織的自制心を失わせる方向に働いている。冒頭に書いたように暴力的方法ではなく、じわじわとゆっくり”見えない方法”で民主主義を殺しているのだ。  だが、こうした動きを止めても民主主義を守ることはできない。せいぜい少し延命できるだけである。拙著『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』で民主主義は終わりつつあると書いた。今の時代は、新しい社会システムが誕生するまでの過渡期なのだ。表に見えている問題だけに対処しても、すぐに類似の問題が生まれるだけだ。大事なのは次の時代で向かうべき目標、守るべき価値観を明確にし、共有し、社会システムを創造することに他ならない。それなくしては、なにをやっても対症療法に過ぎない。 ◆シリーズ連載「ネット世論操作と民主主義」 <取材・文/一田和樹> いちだかずき●IT企業経営者を経て、綿密な調査とITの知識をベースに、現実に起こりうるサイバー空間での情報戦を描く小説やノンフィクションの執筆活動を行う作家に。近著『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器 日本でも見られるネット世論操作はすでに「産業化」している――』(角川新書)では、いまや「ハイブリッド戦」という新しい戦争の主武器にもなり得るフェイクニュースの実態を綿密な調査を元に明らかにしている
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フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器

日本でも見られるネット世論操作はすでに「産業化」している――

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