メキシコで左派大統領アムロ就任。新自由主義から脱却し、貧富の差解消を表明

白石和幸

AMRO

庶民の人気が非常に高いアムロ。photo by Eneas De Troya via flickr(CC BY 2.0)

 ラテンアメリカの両雄、メキシコとブラジルで個性の強い大統領が誕生することになった。
 一人は、ひと月後の1月1日に、ブラジルで大統領に就任する極右のジャイル・ボルソナロだ。

 そしてもうひとり、ボルソナロの大統領就任に先立つこと1か月、12月1日にメキシコで大統領に就任した、左派のアンドゥレス・マヌエル・ロペス・オブラドール、通称”アムロ”である。(参照:「El Pais」)

 ラテンアメリカで最も影響力のあるこの2国、左派のアムロと極右ボルソナロがラテンアメリカ諸国でこれからどのような影響を与えるか今後注目されるところである。

新大統領アムロが直面する「課題」

 アムロの大統領就任で先ず注目されるのは、メキシコの現代史の中で80年余り続いた右派2大政党「制度的革命党(PRI)」と「国民行動党(PAN)」による政治に終止符が打たれたことである。しかも、2度大統領選挙に臨んでしくじった経験をもとに、アムロは今回の選挙に向けて新しい政党「国家再生運動党(Morena)」を創設して選挙に臨んだのであった。アムロがそれ以前に所属していた政党は左派系の第3政党「民主革命党(PRD)」だった。

 アムロにバトンタッチした政党PRIのエンリケ・ペーニャ・ニエト前大統領(2012-2018)はメキシコの政治で最も暗い影を残してしまった。経済は低迷し、特に麻薬に絡む犯罪の急増と賄賂の横行であった。特に、麻薬に絡む殺害は留まることなく急増し、2016年(1096人)、2017年(1423人)そして今年は10月までに既に2742人が殺害されるという恐怖化しているのである。(参照:「El Pais」)

 それに加えて、アムロが就任して早急に取り組まねばならない問題に中米からの移民集団が米国と国境を接するメキシコのティフアナ市に殺到して地元住民の生活習慣を脅かす状態にまで発展していることである。トランプ大統領からは「彼らを米国に侵入させることなく中米に送り返すように」という要求もある。

 この問題から、アムロは米国との円滑な経済関係を保とうとするのか、それともトンプの要求に従うことなく彼らを保護する姿勢を取るのか、注目される点である。

 メキシコ自治大学のラウル・ベニテス教授は「人道的政治の公約を守るべきか、それとも米国に入ろうとする移民集団を差し押さえるのか、ジレンマに取り組むことになる」と述べている。(参照:「NY TIMES」)

 それに加えて、忘れてはならないのはメキシコからも毎年25万人が生活苦から出国しているということである。勿論、彼らの多くが向かう先は米国である。(参照:「El Pais」)

新自由主義からの決別を表明

 経済の低迷については、アムロはこれまでの長年続いた右派政権による新自由主義からの決別を表明している。政府の経済への介入を積極的に進めていくということなのである。新自由主義の影響で富裕者がより豊かになり、貧困者はより貧困になっているのを是正したいとしている。

 ペーニャ・ニエト政権下で貧困者は43%以上にまで増えているということ。特に、貧困層には敏感に反応しているアムロにとって貧困者の救済は彼の最も重要な政治テーマなのである。

 それを反映させるかのように、贅沢な大統領専用機は利用しないとしている。また、これまで70年余り大統領の官邸とされていたロス・ピノス(Los Pinos)>は贅沢だとしてそこで執務を取らないと決め、そこを一般公開することにした。そして、彼は自宅から国立宮殿に通い執務を取ると決めたという。(参照:「El Pais」)

 一方で、アムロはこれまでメキシコで長年政権を担った右派政権とは異なり左派色の政権になるということで、メキシコの企業家の間ではアムロへの不信はまだ十分に払拭されてはいない。彼のこれまでの発言にも色々と矛盾が指摘されている。

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アムロは国民の期待に支えられている
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