アメリカで存在感を増す反トランプの草の根運動。日本のリベラルも学ぶべきその手法とは?

indivisible movement in womens march

photo by Master Steve Rapport via flickr (CC BY 2.0)

 今月6日に行われた米中間選挙では、連邦議会上院では共和党が過半数を維持したものの、下院では民主党が過半数を制する結果となった。  下院ではアメリカ建国以来、女性議員が初めて100人を突破ネイティブ・アメリカンイスラム教女性下院議員も初めて誕生した。  昨年1月のトランプ政権発足後、「アメリカの分断」がより顕在化したとの指摘が相次ぐなか、女性やマイノリテーの国会議員や地方議員が続々と誕生しており、アメリカでは新しい政治の風が吹き始めている。  その原動力の1つとされるのが、2年前から始まったインディヴィジブル」(Indivisible Movement)という草の根運動だ。

トランプ政権の誕生にショックを受けた、2人の元政府職員によって始められた草の根運動

 インディヴィジブルという言葉は、多くのアメリカ人にとって馴染み深いものだ。ニュース映像やハリウッド映画などで、アメリカ人が公式行事や学校の教室などで、起立して「忠誠の誓い」を唱えるシーンを目にしたことはないだろうか。多くの場合、右手を心臓の部分にあてて、国家と国旗に忠誠を誓う。その際に唱えられる一文にインディヴィジブルという単語が入っており、その意味は「分割することができない」という形容詞だ。忠誠の誓いの中で、「神の下に、分割されることのない国家」という表現があり、そこにインディヴィジブルという言葉が使われている。  この言葉がアメリカの新しい政治運動の代名詞として使われるようになったのは2年前のことだった。トランプ政権の政策がアメリカ社会の分断をより深刻なものにすると懸念した連邦議会の元スタッフ4人が中心となって、2016年12月14日に分断の対義語でもあるインディヴィジブルという言葉をタイトルにしたハンドブックをネット上で公開。選挙区で国会議員に話を聞いてもらうためのコツなどが具体的に記載されていたため、多くの有権者の間で話題となり、やがてインディヴィジブルは全国のリベラル派の有権者や小さな小規模のグループをまとめるプラットフォームとなった。  インディヴィジブルの作成に携わった4人の中心人物のうち、夫婦でもあるエズラ・レヴィンレア・グリーンバーグは民主党の下院議員事務所で助手として働いていたこともあり、議員が喜ぶことと恐れることの両方を熟知していた。  インディヴィジブルの参加者について、正確な数は発表されていないが、昨年8月の時点で約5900の地域支部が存在している。フェイスブックとツイッターのフォロワー数は、それぞれ約25万人程度となっている。インディヴィジブルの運営資金は基本的には賛同者からの寄付によるもので、各地域のインディヴィジブル運動の関係者が創設者に定期的にいくらか収めたり、メンバーから会費を取るといったことはない。
次のページ
誰もが閲覧可能な「反トランプアジェンダの手引き」とは?
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会