ついに見つかったアルゼンチン海軍潜水艦。しかし、家族の思いをよそに浮上は困難

白石和幸

S42ARASanJuan

Martin Otero via Wikimedia Commons (CC BY 2.5)

 昨年11月15日に消息を絶ったアルゼンチンの潜水艦ARA サンフアン(San Juan)。当サイトでもスペイン語圏のメディアで報じられるその後をずっと紹介してきたが、ついに探索を進めていた米国テキサス州ヒューストンに本部を置く企業オーシャン・インフィニティー(Ocean Infinity)によって、11月16日未明(現地時間)に、アルゼンチンの沿岸から500キロ離れた沖合、水深907mの位置で発見された。その周囲80-100m四方に残骸が散らばっているという。
 11月16日といえば、消息を絶ってから1年と1日が経過した日である。1年目にあたる11月15日にはマクリ大統領も出席して乗組員の家族らによる集会行事を終えたところであった。その時のマクリ大統領の演説内容から政府はARAサンフアンが既に発見されていて、その発表を敢えて1周年記念日に合わせるように調整したと思えるふしもあったと乗組員の家族らの一部では感じたそうだ。何しろ、今回の出来事では潜水艦が消息を絶ってから政府からの情報は常に不十分で、何か隠していると思わせるような印象を乗組員の家族に与え続けて来たのである。

見積もり8億2500万円で落札したオーシャン・インフィニティ

 今回の探索を担当したオーシャン・インフィニティーは、今年5月に政府が探索会社の入札を実施した時に応札した9社の内の1社であった。
 同社のCEOは、イギリスのファンドなどで働いた経歴を持つ弁護士であるオリバー・プランケットという人物で、2014年に消息を絶ったマレーシア航空MH370の探索にもあたった企業である。(参照:「Perfil」)

 入札に参加したのはアルゼンチンから4社、米国3社、パナマ1社、スペイン1社であった。オーシャン・インフィニティーは探索の費用として750万ドル(8億2500万円)がかかるとし、その費用は潜水艦あるいはその残骸を見つけた時だけこの費用をアルゼンチン政府が負担するものという提案であった。一番安い見積もりは480万ドル、最高は1070万ドルまで幅広いオファー内容であった。

 オーシャン・インフィニティーの今回の探索船シーベッド・コンストラクター(Seabed Constructor)には船員、エンジニアなど40人が乗船し、遠隔操作による無人潜水機を5機搭載し、1機がそれぞれ2時間の探索を続けて合計10時間の連続探索を実行して、それを42時間継続させる作業を繰り替えしていたという。(参照:「Clarin」)

 アルゼンチン政府が探索を決定したのは勿論乗組員の家族からの強い要望と世論を考慮しての決定であった。しかし、調査船の入札を決めてから最終決定でオーシャン・インフィニティーに探索を依頼するまで実に106日を無駄に経過させていたのである。(参照:「Perfil」)

 探索は9月8日から開始され、120日間の契約が交わされていた。即ち、12月8日までに発見されない場合は探索作業を終えることになっていたのである。(参照:「Le Nacion」)

 アルゼンチン政府がオーシャン・インフィニティーを選択したのは妥当な決定だったとされている。今回のARAサンフアンの発見で、アルゼンチン政府は750万ドルをオーシャン・インフィニティーに支払うことになっている。

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発見はできたが引き揚げは……
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