――技能実習制度では、実習生は「送り出し機関」(本国)→「監理団体」(日本)→「受け入れ企業」(日本)と送り出される仕組みになっていますが、ここには構造的な搾取があります。
岡部:最大の問題は借金です。昨年、ベトナムでは実習生の借金は3600ドル(約40万円)を上限とする規定ができたのですが、実際の必要経費はそれくらいです。しかし、借金の金額は最近でも80~100万円、それ以前は150~200万円でした。それでは、必要経費に上乗せされたお金は何なのか。
まずは
送り出し機関の仲介料です。送り出し機関は
監理団体をベトナムに招待して接待しています。日本人向けの接待は日本並みの相場なので、
監理団体関係者の送迎、飲み食い、カラオケ、女性をあてがう費用で一晩20~30万円かかります。この
接待費が仲介料に上乗せされているのです。
次に
保証金です。これは送り出し機関や監理団体が実習生から預かり、彼らが失踪した場合に企業へ支払うお金です。保証金は20~50万円程度で、実習生の借金に上乗せされています。
実習生が失踪しても損をするのは本人だけで、企業は損をしない。
利子もあります。ベトナムでは100万円の借金に対して月1万円の利子がつくので、1か月に3万円を返済しても元金は2万円しか減りません。
借金以外にも余計な負担があります。たとえば、実習生は
給料から年金保険料が引かれています。なぜ彼らが年金を払うのか。2年以内ならば脱退一時金として8割は戻ってきますが、実習生から毎月どれだけの年金が徴収されているのか。
また技能実習制度には1号(在留期間1年)から2号(在留期間2年延長)になるための
技能評価試験があります。試験料は2~3万円で、不合格でも改めて試験料を払えば追試が受けられます。昨年からは新たに1号、2号の技能実習満了後に受ける3級試験が設けられました。3級試験に合格したら3号(在留期間2年延長)の資格を得ることができますが、問題は
2号の実習生全員に受験が義務付けられていることです。なぜ
帰国希望者にも受験を義務付けるのか。これでは
関係団体の小遣い稼ぎです。
これらの試験料は企業が支払うことも多いのですが、約27万人の実習生は複数回、2~3万円の試験料を支払う制度になっているということです。これまで実習生の試験料はいくら払われてきたのか。
送り出し機関、監理団体、受け入れ企業の7~8割は悪質だと感じます。しかし、いちばん儲かっているのは国です。ベトナムは国策として貧しい若者を日本に送り出しています。彼らが借金を返すために円を稼ぐことで、国内経済が発展するからです。ベトナムでは「1000人送り出せば100億円儲かる」と言われていますが、ベトナムの100億円は日本の1000億円です。
送り出しは一つの産業になっているのです。
一方、日本はベトナムから労働力を確保して国内経済を回しています。もはや外国人労働者がいなければ日本社会は成立しないのではないか。しかし、実習生や留学生がまともに働くことは難しく、失踪したり犯罪に走るケースが増えています。これはお互いにとって不幸です。