企業に所属していると上司や上の役職の人から、常に目標を与えられる。
責任感が強いとその目標を達成しようと奮闘するが、人は与えられた目標に対しては達成責任を感じづらい。また、仮に目標が達成できなかった場合には、「そもそも与えられた目標のレベルが高すぎた」と他人の責任にしてしまいがちだ。
人は他人に与えられた目標ではなく、自分で選んだ目標のほうが達成することに対して責任を感じ、主体性を発揮しやすく、やる気を出すということがわかっている。これを心理学では「自己決定理論」と呼ぶ。
今回のプロジェクトでは、与えられた営業目標を「達成目標」、それを達成するために必要な行動を「行動目標」として自分で設定してもらうことにした。
「行動目標」とは言葉の通り、どのようなアクションを起こすかの「トゥ・ドゥリスト」のようなもの。その「行動目標」をひとつずつ達成していくことで、最終的な「達成目標」がクリアできるようになるという仕組みだ。
与えられた「達成目標」を達成するための「行動目標」は自己決定してもらう。それによって、主体性を発揮しやすくなる。他人から与えられた目標では、それを達成できない理由を人のせいにしやすい。目標は自分で設定することに意味があるのだ。
また、たとえ「達成目標」は達成できなかったとしても、「行動目標」を達成できていれば、「学習性無力感」を感じづらくなる。
人がやる気を維持するには、成功体験が必須である。「達成目標」がすべてクリアできるなら問題ないが、なかなかそうもいかないのが現実である。というか、すべて簡単に解決できる「達成目標」のほうがむしろ問題だ。
「行動目標」を設定することで、「学習性無力感」は発生しづらく、着実に達成感を味わうことが可能となる。「達成目標」に対するモチベーションが下がらないよう、着実に成功体験を積んでもらうためにも「行動目標」は必須と言えるだろう。
他人から与えられた仕事に対しても、やる気を維持するためには、身近な目標を自分で設定する……。そんな心理学的テクニックを使ってみてはいかがだろう?
【参考資料】
『無気力なのにはワケがある 心理学が導く克服のヒント』大芦治
『自己決定理論における動機つけ概念間の関連性』岡田涼
【山本マサヤ】
心理戦略コンサルタント。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催。これまで数百人に対して仕事やプライベートで使える心理学のテクニックについてレクチャーしてきた。また、メンタリズムという心理学とマジックを融合した心理誘導や読心術のエンターテインメントショーも行う。クラウドワークスの「トップランナー100人」、Amebaが認定する芸能人・著名インフルエンサー100人に選出
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