フェイクニュースが後押しした極右ボルソナロのブラジル大統領選勝利。当選後リベラル女性への暴行事件なども発生

ボルソナロを後押しした「フェイクニュース」と「偽造アカウント」

 だが、この「エリ・ノン」集会の直後、ボルソナロ氏の支持率は逆に上がり、追い上げを見せていた労働者党候補のフェルナンド・ハダジ氏の支持率が停滞、不支持率が急増したのだ。この理由は本当に謎だったが、まもなく、ワッツアップ上ではハダジ氏に対するフェイクニュースが横行していたことを知った。「ハダジは学校でゲイ教育をしようとしている」などのニュースが大量に流れていたのだという。  さらにその後、「ボルソナロ氏への協力企業が数億単位のフェイクニュースを流す契約をしていた」と報道され、関連企業がワッツアップへの接続禁止処分を受けた。さらに数日後にはフェイスブック内の68もの親ボルソナロ・サイトがフェイクニュースや偽造アカウントであることが問題視され削除された。だが、こうした疑惑があがった頃、すでにブラジル世論の空気は「アンチ労働者党」の空気に染まっていた。  ボルソナロ氏が当選したことにより、右派を好みがちなウォール街などのグローバルな金融業界や財界は概ね歓迎ムードで、それが同氏を後押しする理由にもなっていた。だが、当選後、暴走したボルソナロ支持者が左派の女性やLGBTに対して重傷、あるいは時に殺害まで起こす暴力事件をブラジル全土で多発させる事態が続いている。 「教育現場が左派より過ぎる」として学校内で政治や性教育を論じることを禁じる「教育現場への検閲行為」とも言える法案を極右勢力の圧力で通そうとする動きが起きたり、ボルソナロ氏の不用意な言動により、アラブ諸国やキューバ、中国などとの国際関係の雲行きを危うくしたり、国民の大反対で見直しとなったが、アマゾン森林伐採の件で、環境問題で国際的に重い責務を課されているにも関わらず環境省を廃止しようとしたり……。’19年1月の正式就任の前に、早くもこうした混乱が毎日のように起きている。  最後にブラジル在住日本人の場合、古くからの日本移民には保守層が多いゆえにボルソナロ氏には賛成、企業関係の駐在者は経済システム的には賛成だが同氏の主義や思想には「?」、ブラジル好きが高じて住み着いたタイプの人たちは「自分の愛した国はこんな国でない」と嘆き、帰国の希望を口にし始めている、というのが現状だ。 <取材・文/沢田太陽>
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会