乙武洋匡、聖火ランナーを目指す!? AI技術を駆使したロボット義足

林泰人

 大ベストセラーの『五体不満足』や、車椅子のホストを主人公にした異色小説『車輪の上』で知られる作家の乙武洋匡氏。先天性四肢切断により、生まれつき手足がないことから、障害者と社会の向き合い方、バリアフリーに関する提言も多く行ってきた。そんな乙武氏が、いま聖火ランナーを目指しているという話が……。いったい、どういうことか?

AI搭載のロボット義足

乙武洋匡氏(右)とソニーコンピュータサイエンス研究所の遠藤謙氏(右)

 普段は電動車椅子を利用している乙武氏だが、現在は義足に挑んでいるという。その背景には、研究機関や企業による大きなプロジェクトがあった。渋谷ヒカリエを中心に開催された「2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展」でのシンポジウムでは、その気になる中身が発表された。
「JST CREST×Diversity」と題されたこのシンポジウムには、乙武氏のほかメディアアーティストの落合陽一氏なども登壇。AI技術を個々人に最適化し、身体的・能力的困難を乗り越えることをテーマに、開発が進められている義足が紹介された。まさにSF映画のような世界だが、もちろん課題も多い。

「今のAIの問題点としては、広く社会にあるいろんなものを認識するような機器を作るとか、スマートフォンで認識系を考えることをプラットフォーマーと言われるグーグルやアップル、フェイスブックのような会社が行っています。我々はそれに対して、身体が人によって多様な社会、視聴覚能力が多様な社会で人がスマホを使えないといった問題があるときに、どれだけ対応させていけるかを考えています」(落合氏)

 たとえば、何かをAIが認識して掴むにしても、不特定の物ではなかなか難しいのだとか。しかし、スマホならスマホだけを認識して掴むことは可能だという。似た事例では、ユーザーが聴きたい音。たとえば、自分の名前が呼ばれたときにだけ、AIを通して通知がされるといった機能も挙げられる。

 つまり、AIは広く社会に浸透しているが、特別な事情を持った人には、まだまだ使い勝手がよくないということである。

 また、そうした現状が余り世間に伝わっていないことも、開発速度を下げる要因のひとつとなっている。ソニーコンピュータサイエンス研究所の遠藤謙氏は次のように語っていた。

「たとえばパラリンピックでは走っている映像を観るじゃないですか? 『障害者が義足をつければあんなに速く走れる!』という風に思われがちですけど、実は陰にはものすごい努力があります。障害者、特に脚の切断患者さんのリアルというのは、なかなかパラリンピックでは伝わりづらいと思うんですよね。なので、開発するだけでなく、その研究を世の中に発表するすべを持たなければ、ロボット義足も流行っていかないと思います」

 そう今回、乙武氏に合わせて開発されている義足は、ただの義足ではない。AIやモーターが搭載されたロボット義足なのだ。これによって階段を昇り降りしたり、座っている状態から立ち上がることが可能になるという。

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手がつけない恐怖やバランスの問題も
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