フランスでは、極右だけが拘束された記者を『自己責任』と批判した
2005年1月にイラクで拘束されたオブナ記者
―――フランスでも過去に、日刊紙『リベラシオン』のフローランス=オブナ記者がイラクのバクダッドで拘束され、人質にされたことがありましたね。
「2005年1月5日に彼女はイラク人通訳のフセインさんと武装勢力に拘束されました。その間、与党・野党を問わず彼女たちの解放を求める集会がフランス全土で行われましたし、解放を求めるために国全体が連帯しました。パリではすべての駅構内や町中に、2人の顔写真が載った解放を求めるポスターが貼られました。
『自己責任』だと一人主張したのは極右政党『国民戦線』のジャンマリー=ルペン党首だけでした。日本の自己責任バッシングは、まるで日本全体が極右化しているように思えます。2005年6月12日にオブナ記者が解放されたとき、ジャック=シラク大統領はバカンスを切り上げて空港に迎えに行きました。日本政府の対応との落差を感じてしまいます」
記者の解放を、国を挙げて喜んだフランス。謝罪を求めた日本
オブナ記者とフセイン通訳の解放を求めるポスターが至る所に貼られた
―――オブナ記者は6月14日に会見を開きましたね。筆者も出席して、最後に歓迎の花束を渡したらフランスでニュースになり、後日オブナ記者からお礼の絵はがきをいただきました。
「会見で、オブナ記者は拘束状態について話しました。ほとんど暗闇の中で、全身を縛られ、放置された。その状態で157日間も、精神を病まずによくいられたと思います。安田さんも同様です。たいへん恐縮しながら申し上げますが、オブナ記者の解放を、国を挙げて喜んだフランスのほうが先進国標準です。安田さんや家族が謝る姿は日本の異常性を示していると、欧米の特派員ならばみな思っていますよ」
―――最後に日本人へのメッセージを。
「安田純平さんは勇気あるジャーナリストであり、彼の仕事は民主主義の礎です。どうか、彼の今後の活動も応援してほしい。強くそう願います」
<取材・文・撮影/及川健二(日仏共同テレビ局France10日本支局長)>