ギリシャの急進左派シリザ(SRYZA)が選挙に勝つためにチプラス党首が最も強調していたのが、財政緊縮では年金制度の改革には一切手を付けないと公約していたことだった。ところが、実際に政権に就いた途端に歳出削減の対象のひとつになったのが年金であった。しかも、その削減がこれまで繰り替えされているという厳しさである。
3回に亘る金融支援で受けた額は3000億ユーロ(39兆円)。それを2032年から返済して行かねばならない。そのためには財政収支を黒字にする必要である。GDPが2000億ドル(22兆円)の規模の国で、輸出がGDPの10%程度しかない。消費税をできるだけ払わないようにする傾向の強い国民性で脱税は横行している。しかも、外国からの投資の魅力も薄い。大半の銀行が多額の不良債権を抱えており、この問題も解消されていない。唯一、政府の歳入が期待できるのは外貨の獲得が期待できる観光だけである。
このような経済体系では負債の減免をしない限りギリシャ経済の立ち直りは不可能である。負債の減免がない場合は、財政改善には歳出の削減しかないのである。その一番の対象にされるのが勿論、年金支給額の削減である。
しかも、これまでギリシャの年金支給額は<GDP比で16%>というのはEU加盟国で最も高い比率なのである。だから年金支給額の削減は常に標的にされる。(参照:「
El Economista」)
だから、これからも生活費が比較的安いブルガリアへのギリシャ人の移住が増加するはずである
ちなみに、ギリシャでの平均年金支給額は722ユーロ(9万4000円)で、それ以外の国だと、
スペイン932ユーロ(12万1000円)
イタリア502ユーロ(6万5000円)
ポルトガル400ユーロ(5万2000円)
フランス1086ユーロ(14万1000円)
ドイツ1003ユーロ(13万円)
スウェーデン1500ユーロ(19万5000円)
といったのがEU加盟国で支給されている年金額である。(参照:「
ABC」)
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身