「インセル」によるヨガ教室銃撃は、トランプ時代を象徴する事件か

ヘイトクライム増加の原因はトランプ? 100人を超える女性議員の誕生は何を意味するか? 

 政治ニュースサイト「ポリティコ」は1日、アメリカ国内で相次ぐ政治暴力事件を受けて、「トランプ大統領がアメリカ社会を分断したと思うか」という質問で行った世論調査の結果を発表した。この質問に対し、民主党支持者の88%、無党派層の55%がイエスと回答している。イエスと回答した共和党支持者は45%で、支持政党間で回答に大きな差があることが判明した。政治暴力やヘイトクライムが増加する原因については、支持政党に関係なく「トランプ大統領の言動」を選ぶ人が最も多かった。  トランプ大統領といえば、女性蔑視の発言も時折報じられており、インセルからの支持率は高いとされている。しかし、6日に行われた中間選挙では、「史上初」となる議員や知事が何人も誕生した。議会下院で女性議員の数が100人を超えたのは初めてで(これまでは84人が最多)、その中でもさらに史上初となるケースが相次いでいる。  イスラム教徒の女性下院議員はこれまで1人もいなかったが、今回ミネソタ州とミシガン州で、それぞれ当選を果たしている。2人の両親は、それぞれソマリアとパレスチナからやってきた移民である。  ネイティブ・アメリカンの女性下院議員も今回の選挙で2人誕生したが、こちらもアメリカ史上初のケースとなった。人口の約4割がヒスパニック系のテキサス州では、メキシコにルーツを持つヒスパニック系の女性下院議員が初めて誕生した。保守的な土地柄で知られる中西部のコロラド州では、ゲイであることを公表していた候補が知事選に勝利している。国会議員ではないが、こちらも史上初のケースだ。  ニューヨーク州では、プエルトリコにルーツを持つアレキサンドリア・コルテス候補が、女性の下院議員としては最年少となる29歳で初当選を果たしている。  裕福ではない家庭に育ったコルテスさんは、高校時代の成績が優秀であったことから、返済義務のない奨学金を与えられて大学に進学。大学を首席で卒業すると、絵本専門の小さな出版社を起業した人物だ。学生時代にリーマンショックを経験し、苦労しながら起業した生き方を支持する同世代の有権者は少なくない。  ヘイトクライムが増加し、インセルによる銃撃事件が発生するアメリカ社会が不寛容な時代に直面していることは間違いない。しかし、今回の中間選挙の結果は不寛容を推奨するかのように思われるトランプ政権や、インセルを含む支持者たちに対する、有権者の強烈なアンチテーゼだったのではないだろうか。 <取材・文/仲野博文 TwitterID:@hirofuminakano> なかのひろふみ●ジャーナリスト。米エマーソン大学でジャーナリズムの修士号を取得。ワシントンDCで日本の報道機関に勤務後、フリーに転身。2008年より東京を拠点に活動を開始。ラジオでもJ-Wave「Jam The World」のナビゲーターを約4年務め、英BBC系のニュースラジオでは日本から情報を発信。欧米の軍事・犯罪・人種問題を得意とする。ホームページ hirofuminakano.com
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