山口博氏
山口:最初の4分で面接相手に伝えるべき、メッセージでこれだけは欠かせないというポイントはありますか?
阪部:特に若手のビジネスパーソンに対しては、「客観性」「独自性」「再現性」の3点で、面接相手に伝えたいメッセージを組み立てることをすすめています。「客観性」とは、自分の能力を客観的に語るということです。客観性を担保してはじめて面接相手にメッセージがしっかり伝わるようになります。10人いれば10人のほとんどが納得する内容で語ることが必要です。
次に「独自性」とは、自分らしいやり方で問題解決した実績を具体的に語るということです。これにより面接相手の心を動かします。10人いれば一人が思いつくような内容で、しかし、10人のほとんどが納得する内容です。これが100人中、一人が思いつく内容になってしまうと、納得する人の割合は低下してしまいます。
最後に「再現性」とは、今回の成果はたまたまではなく、ほかのケースでも再現性が高いものであることを効果的に語るということです。自分のどの能力が、相手企業のニーズのどの分野に、どのように貢献できるかということを、相手がイメージを沸かせることができるように語るのです。この3点で面接相手を巻き込んでいきます。
山口:まさに、拙著『
チームを動かすファシリテーションのドリル』の「表現力」(第一章)、「構成力」(第二章)、「合意形成力」(第四章)で、これらのスキルを高める具体的な手法を紹介しています。
これらの能力は、もちろん転職面接においては不可欠ですが、日常のビジネス活動においても発揮したい、とても重要なスキルと言えますよね。顧客ニーズにマッチングさせて、自社の商品・サービスを提案する。聞き手の意向をふまえて、説明の仕方を工夫してプレゼンテーションする。部下のモチベーションファクターの琴線にふれるアドバイスをするということと同じ原理のように思います。
阪部:転職のための面接というと、特別なことのように思えるかもしれませんが、日常的にビジネススキル訓練をしていれば、おそれることはありません。最も効果的な方法は、嫌いな人や苦手な人に対して、自分から頑張って話しかける訓練を日常に取り入れることです。
相手は話が客観的でなかったり独自性や面白みにかけると容赦なく指摘してくれると思います。心理的に負荷がかかっているときこそ、コミュニケーションの瞬発力を鍛えるチャンスです。しっかりやれば面接本番でもすぐに効果を実感できるはずです。
<対談を終えて>
転職市場が活性化するということは、所属している会社頼みでなく、自分のキャリアは自分でつくる。そして、ビジネスパーソンが自分のスキルを自分で高める必要性に直面するということです。頭であれこれ考え、いくら専門書を読んだとしても、それだけでスキルが高まるということはありえません。身につけたいスキルをパーツ分解し、コアスキルを反復演習する、自分がやりやすいところから段階的にスキルを上げる、分解スキル反復演習が不可欠なのです。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第108回】
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある
<撮影/山川修一(本誌)>