面接は最初の4分が勝負。トップヘッドハンターが語る転職の成否をわけるスキル
働き方の多様化が進み、転職市場はさらに活性化する見込みだ。今回は、金融を中心にエグゼクティブ向けのヘッドハンターとして活躍する、KANAEアソシエイツ代表の阪部哲也氏に、本連載「分解スキル反復演習が人生を変える」でお馴染みの山口博氏が迫る。
山口博氏(以下、山口):ヘッドハンターとして、多数の候補者と面接をしてきた目でみて、転職が成功する候補者、失敗する候補者は、いったいどこが違うのでしょうか?
阪部哲也氏(以下、阪部):職務経歴や実務経験は申し分ないにもかかわらず、転職を希望する企業での面接で失敗してしまう候補者がいます。失敗してしまう候補者における共通の特徴は、コミュニケーションの仕方に差があるのだと思います。
山口:コミュニケーションスキルには、表現力、構成力、合意形成力、それらをさらに発揮するための相手のモチベーションファクター(意欲を高める要素)を見極めるスキルなどがあると思います。特にどのスキルに差異があるのでしょうか?
阪部:どのスキルかといえば、表現力です。面接では、相手に自分の価値を「伝える」ことが最も大事です。自分の価値を伝えられるかどうかは、自分がその相手に何を表現するかということにかかっています。
その意味で面接は、言うなれば営業と同じだと思います。候補者にとってみれば、面接相手(顧客)のニーズを見極め、それに合致した自身の能力(商品・サービス)について的確に語理、相手を巻き込むという活動です。それができるかどうかは、自分の優秀さを語るだけでは不十分で、自分の能力のどの部分が、その企業のどの分野に貢献できるかを語れることが不可欠なのです。有能さを主張できる人はたくさんいますが、自身の能力を企業のニーズとの間に架け橋をかけることができる人は少ないのです。
山口:人はそれぞれ異なるモチベーションファクターを持っている。私はチームや顧客をハンドリングするために、相手のモチベーションファクターを見極めてリーダーシップを発揮するプログラムを展開しています。その考え方と同じで、転職先企業や採用担当者の採用モチベーションファクターを見極めて、それに合致したコミュニケーションを展開することが鍵なわけですね。
阪部:そのとおりです。そして、限られた時間で面接相手を納得させる必要があります。採用面接は最初の4分が勝負です。この4分で自分が有能であることに加えて、その企業のニーズに適う貢献ができるということを語れればよいのです。そのためには、話の構成をどう組み立てるかということがとても大事になります。これは構成力ですね。訓練されていない面接官は、無意識ののうちに最初の4分の印象を最後までひきずる傾向があります。
山口:冒頭に何を話すか、言いたいことの要点は何か、最も伝えたいメッセージは何か……。それを相手の心に響くフレーズで語ることが必要になりますね。私の言葉で表現すると、会議の相手だろうが、顧客だろうが、面接相手だろうが、「相手をファシリテーションするスキル」だと思います。それはぶっつけ本番では、なかなかできないことだと思います。日頃からスキル訓練をしていくことが必要ですね。
阪部:実はこうしたスキルに加えて、候補者が必ずやっておくべき、簡単なことがあります。左には企業が求める人材要件が書かれた求人票や募集要領を置く。右には、いわば“商品”である自分の職務経歴書を置き、企業が求める人材要件と、自分の職務経歴が一致している点にマーカーを引くんです。これだけでかなりの程度、人材要件と自分の能力のマッチングができるのです。これをベースにして、何をどのような順番で語るかということを準備しておけばよいのです。
企業が求める人材要件は、その会社のHPなどでも知ることができますし、ヘッドハンティング会社が持っているより詳しい情報をよく理解すればよいのです。マッチングする対象は、他ならぬ自分自身が取り組んできたことですから、実は準備しようと思えば、誰でも実施できることなのです。
一例を挙げれば、その企業の要件に照らして、若いときの経歴をアピールしたほうがよいと思ったら、当然若いときの経歴から書くべきです。逆に最近の経験を伝えたいと思ったら、現在からさかのぼって書くほうが戦略的です。欲をいえば面接する企業の数だけ、職務経歴書を作成したい。
山口:候補者は、とかく自分の優れた点をアピールしたくなるもの。しかし、それが企業が求めることと異なっていれば、どれだけ有能であっても面接は通過しないということですね。
自分の魅力を相手のニーズに当てはめて表現
転職面接は最初の4分が勝負
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