キューバがロシアと再接近。かつての旧ソ連レベルとの関係が復活の可能性も

トランプの「制裁」政策

 それまでに米国はキューバの軍関連企業を配下に収める組織GAESAとの取引を禁止させていたが、今回の制裁で新たにキューバ軍の支配下にある24の営利組織との取引も禁止するとした。また、1960年にフィデル・カストロ政権が、当時キューバに存在していた民間企業を乗っ取って国営化させた。その一連の企業に制裁を科す為に存在していたヘルムズ・バートン法の適用も検討する余地があるとした。(参照:「Diario Las Americas」)  キューバのロシアへの接近を前にして、ロシアの軍事専門家イゴル・コロシェンコは「スプートニック」の取材に次のように答えたという。 「我々はキューバに戻らねならない」、「3つの基地が必要だ。一つは米国の動きをコントロールし理解できる電子情報基地。そして多用途の潜水艦の停泊できる基地。それに加えて、米国がINF(中距離核全廃条約)を破棄するようであれば、キューバにミサイルを配備することだ。そうすればキューバの安全と国際的なテロとの戦いに貢献することになる」  ミハイル・マカルク将軍も「ラジオ・スプートニック」で、「ロシアは与えられた全ての機会を早急に利用すべきだという結論に至る。信頼出来る同盟国との協力を強固にすべきだ」と示唆したという。(参照:「Infobae」)  現在、ロシア政府が明らかにしているのは、衛星測位システム「グロナス(Glonass)」の設置、そして「鉄道網の近代化」への投資を挙げている。(参照:「El Pais」)  鉄道網の近代化ということと併行して発電システムの発展にもロシアはキューバに支援をするということで、既に18億ユーロ(2340億円)が2つの借款にて供与されている。(参照:「El Nuevo Diario」)  米国のトランプ大統領が展開している外交は、キューバが嘗ての旧ソ連の関係復活を築くことを導いているようだ。一方のロシアは、北大西洋機構(NATO)がロシア領土に接近していることに対し、それを牽制する意味でNATOのリーダー国、米国にできるだけ接近するにはキューバにロシアの基地を復活させるのは絶好の機会だと見ている。  筆者自身は、オバマの中東外交には大いに疑問を持っていた。しかし、キューバとの関係を復活させたのは良いことだと見ていた。しかし、トランプはそれをゼロにしてしまったのである。オバマがやったことをトランプはことごとく覆しているのだ。  トランプが2期大統領を続けると世界のどこかで戦争が起きると考えるのは邪推に過ぎないのだろうか……。 <文/白石和幸  photo by Kremlin.ru (CC BY-SA 4.0) > しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会