オープン形式の研修における「名刺交換禁止」が研修効果を悪化させるこれだけの理由

山口博
 この連載では、企業研修における定説が、実は研修効果を低下させる事例を取り上げてきた。こうした企業研修で私がとても疑問に思っていることがある。それは私が外部講師として研修を行うときのこと。社内研修の主催者である企業のある部門や、さまざまな企業が参加するオープンセミナーを主催する研修事業者から、「名刺交換はご遠慮ください」と言われることが少なからずあるのだ。

「名刺交換NG」は研修の効果を悪化させる

photo via Ashinari

 理由を聞くと、「個人情報の管理を厳格に行っているため」だという。もちろん個人情報管理は必要不可欠だ。しかし、名刺はそもそもビジネス活動のために作成しているわけで、その交換すら禁じてしまっては、本末転倒。ビジネス活動そのものに弊害が生じてしまう。

 私が講師を務める研修では、参加者が会場に入ってくるたびに席に伺い、「本日はご参加いただきありがとうございます。よろしければ名刺交換させてください」と申し上げて、名刺を差し出させていただく。必ずそうしているのは、私の人となりが少しでもわかれば、研修効果が間違いなく上がるからだ。

 一言二言でも会話をすれば、多少なりとも、お互いの人となりがわかるもの。参加者は事前の研修案内で、どこの誰が講師だということはわかっているかもしれない。しかし、実際には一言も会話をしたことのない、いわば“得体のしれない人”の話を聞いたり、進行をしてもらっても、内容が身に入らないのが当たり前だ。

 講師の立場からみても同じことが言える。参加者が、どこの企業・部門・職位の人だということはあらかじめわかっていたとしても、直接対話して得られる情報とは比べものにならない。直前のわずかな時間であろうと、参加者一人一人と話しておくほうが、彼らについての状況がわかるのだ。

「どのような狙いで参加しているのか」「モチベーションレベルの高さ」「とても忙しいなか、時間のやりくりをして参加してくれた」と言った個々の表情が見えてくる。それに応じて研修の進行を、多少なりともアレンジしやすくなるだろう。

 加えて、私は直前に名刺交換をして会話することで、相手のモチベーションファクター(意欲を高める要素)を見極める。そうして、参加者全体の傾向として牽引志向の人が多いと思ったら、そういったタイプの人に響きやすい、「チャレンジ」「オリジナリティ」「ステップアップ」というニュアンスのフレーズを多用して、参加者の意欲を高める。

 反対に調和志向の人が多いと思ったら、「コラボレーション」「リスクマネジメント」「バランス」というような表現を使うように意識するのだ。

 特に印象的なモチベーションファクターの人がいれば、研修の最中に参加者の一人と掛け合いをするような場面で、その人のモチベーションファクターをふまえたフレーズを繰り出す。そうすることで、参加者の巻き込み度合は格段に上がる。

 モチベーションファクターの思考と要素については図にまとめてあるので、参加者それぞれのタイプを考えるとき、参考にしてみてはいかがだろう?

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名刺交換は居眠り防止にも効果的

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