敵を作り支持を固める政治手法は、暴力となって具現化する

菅野完

写真:FBI/ZUMA Press/アフロ

写真:FBI/ZUMA Press/アフロ

敵をつくり支持を固める為政者は危険だ。いずれそれは暴力となる

 仕事をしているときは、部屋のテレビでずっと時代劇専門チャンネルかCNNを流している。隣の机で勉強したり遊んだりしている子供たちは当然、英語は一切わからない。だから普段、どんな緊急ニュースがCNNで流れようと子供たちは振り向きもしない。

 だが、このニュースは別だった。なにせCNNのキャスターたちの声が恐怖と怒りに震えている。いつも以上にカメラを真正面から見据え、必死の形相で自分の職場が巻き込まれた異常事態について説明している。画面に映るキャスターたちの顔、避難する人々の姿、そしてあの黄色い封筒に入った爆弾の写真……。これらを見て、英語の一切聞き取れない子供でも理解したらしい。

「え? 信じられない……CNNに爆弾が送られてきたの?」と言ったきり、呆然とした顔でモニターに見入ってしまった。

 子供たちは事態の深刻さに説明を求めている。そこで、今回、爆弾が送られてきたのはCNNだけではなく、クリントン夫妻、オバマ前大統領、バイデン前副大統領も標的になっていることを説明し、政治家やメディアだけでなく、例えば、ロバート・デ・ニーロの家も標的になっていることまで、あくまでも事実関係だけを淡々と説明した。

 デ・ニーロの名前を出した瞬間、勘のいい下の娘は「あ。みんなトランプ大統領のことをヒハンしてる人たちだね」と己が才を誇るような顔をした。しかし、彼女のこの総括は間違っている。今回狙われたのは、「トランプを批判している人たち」ではない。「以前からトランプのほうが敵だと名指ししている人たち」だ。いまだ犯人は特定されぬものの、狙われた人たちが「2016年の大統領選挙の時からトランプが名指しで口汚く罵っていた人たち」という共通点をもつところに、いまアメリカの人たちはおののいている。「選挙の舌戦が、政敵を罵る言葉が、そのまま暴力に発展するのか」と。

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誰かを指さし支持基盤を鼓舞する手法はもうやめよう
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