沖縄防衛局長が「私人」を装い、行政不服審査法を“乱用”
石井啓一国交大臣(公明党)が10月30日に埋立承認取消の執行停止を決定したことを受け、東京・平河町の都道府県会館で緊急会見した玉城デニー沖縄県知事
安倍政権が「行政不服審査法」により沖縄県名護市辺野古の基地建設工事再開を可能とする法的措置を完結させた。防衛省の沖縄防衛局長が10月17日、私人になりすまして「埋立承認撤回」に対して不服審査請求をすると、公明党の石井啓一国交大臣は10月30日に執行停止を決定したのだ。
これは、沖縄県が不服審査への意見書を25日に提出した、わずか5日後のこと。翌26日には行政法の専門家から「不服審査請求は法律の乱用」という批判が噴出していた。
たまたま上京していた玉城デニー・沖縄県知事は、30日13時から都道府県会館(千代田区平河町)で記者会見に臨んだ。その直前に国会内で開かれていた野党合同ヒアリングで、経過説明をした謝花喜一郎・沖縄県副知事も合流。謝花氏は「翁長知事が病床で私に指示した埋立承認撤回を、石井国交大臣はこんな短時間で執行停止にしていいのか!」と怒りで声を震わしながら語っていた。
1階の記者会見エリアに現れた玉城知事は、まず今回の執行停止に対するコメントを読み上げた。
「普天間飛行場代替施設建設事業にかかる公有埋立承認の取り消しに対し、沖縄防衛施設局長が国土交通大臣に行った執行停止の申立に対して本日、国土交通大臣が執行停止の決定を行ったとの報告を受けました。
沖縄県は10月25日に国土交通大臣に提出した執行停止申立に対する意見書においても、国の機関である沖縄防衛局には私人の権利利益の救済制度である行政不服審査法による審査請求等の適格が認められないため、不適合であること。
今回の執行停止申立は、重大な損害を避けるために緊急の必要性の要件を充足していないこと、沖縄県が今回行った埋立承認取り消しは適法になされたことを詳細に主張し、今回の執行停止の違法性を国土交通大臣に訴えたところであります。
また、さる10月26日には、110名もの行政学者により、今回の国の対抗措置に対して、『国民のための権利救済制度である行政不服審査制度を乱用するもの』と指摘され、執行停止申立とともに審査請求も却下するよう求める声明が発表されたところです。
しかし国土交通大臣は、3年前の承認取り消しと同様、沖縄防衛局長が一私人であることを認め、県の意見書提出から5日後という極めて短い審査期間で執行停止の決定を行いました。今回の決定は結局のところ、結論ありきで中身のないものであります。
私はさる10月17日の会見において、仮に本件において国土交通大臣により執行停止決定がなされれば、内閣の内部における自作自演による極めて不当な決定と言わざるを得ないと申し上げましたが、まさにそのような状況になり、審査省として公平性や中立性を欠く判断がなされたことに強い憤りを禁じえません。
県としては今回の執行停止に対し、当該決定に係る文書を精査の上、国地方係争委員会への審査申出を軸に可及的速やかに対応をして参ります。承認取消の効力の執行停止決定がなされたとしても、承認に付した留意事項に基づき、沖縄防衛局は沖縄県との間で実施設計、および環境保全対策等に係る事前協議を行う必要があります。事前協議が整うことなく、工事に着工することや、ましてや土砂を投入することは断じて許すことはできません。
私は『辺野古に新基地は作らせない』という公約の実現に向けて全身全霊で取り組んでまいります。ぶれることなく、多くの県民の付託を受けた知事として、しっかりとして、その思いに答えたいと思いますので、県民国民の皆様のご支援ご協力をよろしくお願いいたします」