ビジネスで使える心理術・自分のほしい情報を引き出す「返報性のルール」

山本マサヤ
 ビジネスシーンにおいて、相手の真意や自分がほしい情報を引き出すことは、決して容易なことではない。しかし、結果を出しているビジネスパーソンのやりとりを見ると、あるテクニックを使っていることがわかる。

 本項では心理戦略コンサルタントを行う筆者が、優秀な営業マンの使う心理学のテクニックを分析し、誰もが戦略的に使えるよう解説する。

回答の真偽は「自分との距離感」で読み解く

photo via Ashinari

 前回は「ミラーリング」というテクニックを使った信頼関係を意図的に作り出す心理テクニックを紹介した。

 今回は「ミラーリング」を使って信頼関係を築いたあと、自分がほしい情報を相手から引き出す方法について解説する。

 ビジネスの現場で自分がほしい情報があるとき、質問に対して答えが簡単に返ってくるなら苦労はしない。しかし、実際にはそうでない場合が多く、必要な情報を手に入れるには、時間や労力を要することが一般的だ。本当の意味で腹を割った話ができるよう信頼関係を築くのには時間がかかるのだ。また、聞き辛い情報を引き出すためには、そこに至るまでのストーリーを作るのも難しい。

 たとえば、あなたが相手からほしい情報を引き出すときは、どういう風に話を展開するか考えてみてほしい。

「御社の予算感はどれくらいですか?」

「弊社の商品についてどう思われますか?」

 このような質問をする人をよく見かけるが、よっぽど信頼関係を築いていないかぎり、こちらのほしい情報は引き出せなかったり、返事をごまかされたりする。

 信頼関係が十分にできていないため、相手は「この人に話して大丈夫かな?」と心理的に不安を感じてしまうのだ。まずは、その不安を読み取る必要がある。

 注目してほしいのは、「自分との距離感」だ。質問をしたあとに、相手が椅子の背もたれにもたれかかるなど、距離感を取る(=間合いを取る)ボディランゲージをしているときは、答えが「聞かれたくない・言いづらい」ことである場合が多い。そんな状態で相手の口から出た回答は、本心ではないかもしれない。

「弊社の商品をどう思います?」という質問に対して、相手が椅子に背もたれながら「うん、いいと思うよ」と答えた場合は、言葉と行動が一致していない。そのため、何か心配事があるかもしれないということが推測できる。

「受けた恩は返したくなる」心理を利用

 この時点で、相手の回答は本来、自分が求めている情報ではないということがうかがえる。そこで相手から正しい情報を引き出すために効果的なテクニックが「返報性のルール」だ。

「返報性のルール」とは、「何かを与えられると似たような形で返さないといけない」と思ってしまう心理効果のことである。

 心理学者のデニス・リーガンは「返報性のルール」の効果を調べるため、以下のような実験を行なった。

 美術館で一人の被験者に対して、サクラの実験協力者が小さな親切を行う(実験では自分と相手にコカ・コーラを買ってあげる)。その後、しばらくしてサクラの協力者が被験者に「新車が当たる宝くじを売っているので、何枚か買ってくれないか?」と持ちかける。この実験では、比較対象を作るため、小さな親切を行わずに宝くじを買ってくれないかせがむグループも設定された。

 すると実験の結果、小さな親切を受けた人のほうが、受けなかった人に比べて2倍も多くチケットを購入したのである。

 親切を受けた人のほうがたくさん買ってくれることに、そこまで意外性を感じない人もいるかもしれない。しかし、この実験で注目すべき点は、サクラのことを印象的に好きだろうが嫌いだろうが関係なく、恩を受けた被験者は宝くじを購入してしまったということ。人は恩を受けると返さなければいけないという義務感が働くようできていることがわかったのだ。

 この「返報性のルール」を使うことで、相手が自分のことを好きだろうが嫌いだろうが、話を引き出しやすくするコミュニケーションが可能となる。

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コールセンターでも実用される「返報性のルール」

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