OODAループに必要なのは、まず「夢のビジョン」を持つこと
入江氏がかつて戦略担当部門のマネージングディレクターとして働いていた世界最大のネットワーク機器会社、シスコの「Vision」は「人々の仕事、生活、学び、遊びのあり方を変える」というもの。また、世界最大のEC企業アマゾンは「私たちのビジョンは、地球で最も顧客中心の企業であることです。人々がオンラインで購入したいと思うどんなものでも掘り出し見つけ出せる場所を作ります」という「Vision」を持っている。
「このように、本来の『Vision』は『具体的な夢』をさす言葉なのです。OODAループにより、たとえば、5年後に実現したい企業の夢は何か、『顧客に感動を提供する』とか『社会に貢献する』、あるいは『顧客価値を向上させる』といった夢や理想の状態を、それぞれの事業環境のトレンドを観察して設定することです。
その『夢のビジョン』を実現するためには個々人は何をすべきなのかを経営陣と従業員が共有し、組織のメンバー1人1人が行動する際に、自分の行動が『夢のビジョン』とヒモづいているかどうか、判断の基準にするのです。
現在の日本企業の多くは、経営陣が中期経営計画をもとに数値目標(KPI)を示して、「現場にPDCAを回せ!」というばかり。それでは従業員は反発するに決まっています。
経営のOODAループにより、経営は現場をみて従業員も共有できる『夢のビジョン』を作り組織に展開し、現場は『夢のビジョン』に向けて主体的に判断して行動し見直していくことが求められているのです。一方の工場のPDCAサイクルは生産現場の継続的改善のために使うのです」(入江氏)
日本経済にはPDCAの前に、OODAループによる「夢のビジョン」が必要なのかもしれない。
<文/松井克明(八戸学院大学講師、地方財政論)>