カショギ氏殺害と岡口基一裁判官への戒告が暗示する「暗い未来」

 言いたいことが言えない人は日本にもいる。ツイッターでの投稿を問題視され、戒告処分を受けた東京高裁の岡口基一裁判官だ。拾われた犬の所有権が元の飼い主と拾った人のどちらにあるかが争われた裁判に関して岡口裁判官が「この犬を捨てたんでしょ? 3か月も放置しながら」などと投稿した内容が「揶揄するような表現で当事者を一方的に批判し、傷つけた」として懲戒となった。裁判官の法廷外での言動が懲戒の対象となるとは、  しかも、その理由が「傷つけた」などという曖昧なものとは、納得しがたい話だ。しかも裁判官という職業は、憲法で、自身の良心と法のみに拘束される高い独立性が保証された職業。どう考えてもこの懲戒処分は「言論弾圧そのもの」としか評しようがあるまい。  基本的人権の中でも、言論の自由は、その言論が社会的不公正を惹起するものでもない限り、もっとも尊重されるべき自由であるはずだ。しかしカショギ氏にせよ岡口裁判官にせよ、その自由はいとも簡単に、そして実にくだらない理由で制限されてしまう時がある。その都度、大きな声で「言論の自由を守れ」と大真面目に抗議しなければならない。  その努力を惜しんだが最後、みんながみんな、「言いたいことを溜め込んで、熱が出る」という、悲惨な結果が待ち受けているに違いない。 【菅野完】 1974年、奈良県生まれ。サラリーマンのかたわら、執筆活動を開始。2015年に退職し、「ハーバービジネスオンライン」にて日本会議の淵源を探る「草の根保守の蠢動」を連載。同連載をまとめた『日本会議の研究』(扶桑社新書)が第1回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞読者賞を受賞。最近、どこよりも早く森友問題の情報を提供するメルマガが話題(https://sugano.shop/) ― なんでこんなにアホなのか ―
すがのたもつ●本サイトの連載、「草の根保守の蠢動」をまとめた新書『日本会議の研究』(扶桑社新書)は第一回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞読者賞に選ばれるなど世間を揺るがせた。メルマガ「菅野完リポート」や月刊誌「ゲゼルシャフト」(sugano.shop)も注目されている
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