カショギ氏殺害と岡口基一裁判官への戒告が暗示する「暗い未来」

菅野完
AFP=時事通信社

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言いたいことを封殺される世の中が行き着く先

 年をとったからか、どうも最近、子供の頃のことばかり思い出して仕方ない。

 父母が仕事で忙しかったため、昼間は家に祖父母がいた。学校で嫌なことがあったり先生に叱られたりして家に帰った後もモジモジしていると、祖父は決まって、こう言った。「なんかあったんか?言いたいこと言わんと、体に溜まって、熱出るぞ」と。

 大人になってこんな商売をしているのは、子供の時に聞いたこの祖父の言葉が影響しているのかもしれない。言いたいことを言いたいように言う。しかも自分の言いたいことを言葉にすることで、熱が出ないどころか、お金を頂戴しているわけで、誠にありがたい。

 だが、世の中には言いたいことを言いたいように言えない人がいる。言いたいことを言ったがために懲戒処分を食らったり、果ては命を奪われさえもする。

 トルコのサウジアラビア総領事館に入ったきり消息を絶ったジャマル・カショギ氏は、近年米国に拠点を移し、ワシントン・ポストで評論記事を書くようになっていた。

 彼の書いた記事を何本か読んだが、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が進める国内改革や、サウジのイエメン軍事介入などへの批判の舌鋒は実に鋭い。これがサウジ当局の逆鱗に触れ、一部では「総領事館の一室で、生きたまま首を切り落とされた」との報道があるほど、恐らくは残忍な方法で殺害されたと推測されている。

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日本にも言いたいことが言えない人が

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