カショギ氏の死は、サウジの分割を導く導火線になるかもしれない

カショギ氏

カショギ氏 photo by Project on Middle East Democracy via flickr (CC BY 2.0)

 すでにその死亡を巡る二転三転するサウジ側の説明や、噂されている残虐な殺害方法などが世界的に話題になっているサウジアラビアのジャーナリスト、カショギ氏の死。  もともとサウード家から重用され、諜報局長だったタルキ・アル・ファイサル(Turki al Faisal)王子の顧問や、現在サウジで一番の富豪とされているワリード・ビン・タラル(Iwaleed bin Talal)王子の側近も務めたことがある経歴の持ち主が、サウード家の批判者に転じたのは、2015年にサルマン国王の政権になり、彼の第3夫人の長男ムハンマド・ビン・サルマン(Muhamed bin Salman)が第一王位継承者になって専制的な権力を振るうようになってからであった。サルマン皇太子は、論の自由を奪い、サウッド家への批判者は片っ端から収監した。それを見たカショギは自分の身にもその危険が迫っていると感じて米国に亡命したのであった。  米国に渡ってからは、カショギのサルマン皇太子への批判は辛辣さを増した。サウッド家の他の王子らには倹約を敷いておきながら、自らは贅沢三昧をしているといった批判を米国や英国の紙面のコラムを利用して繰り返し行ったのである。サルマン皇太子が外国での自らのイメージアップに高額のお金を費やしている一方で、カショギが徹底的にそれを潰して行ったのであった。  カショギは、彼のコラムで一度、サルマン皇太子は”プーチン大統領のように振舞って忠誠心を要求”しているかと思うと、”現在求められている理想のリーダー”であるかのようにも振舞っていると記述した時もあったという。(参照:「EMOL」)

サルマン皇太子が第一王位継承者となった背景

 もともと、2015年にサルマン国王が政権に就いたとき、第一王位継承者は国王の甥っ子ムハンマド・ビン・ナーイフ(Mohammed bin Nayef)皇太子であった。しかし、2017年6月に、ナーイフ皇太子を飛び越してサルマン皇太子が王位を継ぐことになったのである。そこから彼の専制振りがより強くなったのだが、サルマン皇太子が第一王位継承者になったというのも一つのシナリオが存在していた。  その背後にいたのが、アラブ首長国連邦アブダビのムハンマド・ビン・ザイード(Mohammed bin Zayed)皇太子であった。  アブダビのザイード皇太子は中東で最大の国家であるサウジに影響力を及ぼすことができるということを最優先に考えている人物だ。彼はナーイフ皇太子を後押しすることには興味はない。彼はかつて、ナイーフ皇太子の父親(サルマン国王の弟であるが、)を、猿と比較してバカにしたことがあるほどだ。それをナイーフ皇太子も快く思っておらず、両者は反目している。
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