ドリンクサービスや丁寧な説明が裏目に。失敗する企業研修、意外な要素

山口博

研修の目的は30秒以内に説明

 また、能動性の芽を摘み、モチベーションを低下させる最たるものが、研修開始時の挨拶や注意事項の説明だ。主催者代表の挨拶が10分、運営スタッフによる研修にあたっての注意事項が10分……。延々と説明されている間に、参加者の意欲は逓減する。  主催者代表の挨拶では、「研修の目的は○○なので、しっかり学習してください」「本日の研修は、とても重要なので、しっかり覚えてください」という指示、命令が続く。  運営スタッフによる注意事項では、「PCを開けてはいけません」「携帯の電源はオンしてはいけません」「○時○分に休憩をとります。休憩時間以外は出入り禁止です」……。あれをしてはいけない、これをしてはいけないと禁止事項の説明が続く。  「目的を説明することも、注意事項を徹底することも必要不可欠なことではないか」という意見もあるだろう。しかし、研修の冒頭で長々と目的を説明したり、さまざまな注意事項を徹底したりすることのプラスの効果と、それらによる参加者の意欲を低下させるマイナスの効果を考えると、マイナスの効果のほうが圧倒的に大きいということを言いたい。  研修の目的を説明するのに、30秒以上はいらない。研修の背景、目的、時間配分、参加者に期待する役割を手短に説明するほうが、よほど参加者の理解や意欲は高める。それも主催者代表が説明する必要はない。それどころか、主催者代表が出てきて参加者の意欲を低下させることは、むしろ有害だ。トレーナーが研修の冒頭で行えばよいのだ。  さまざま注意事項を徹底しなければ統制できないようであれば、それは研修の内容が参加者を引きつけることができていないという証左だ。PCを閉じろ、携帯をオフにしろと言えば言うほど、「つまらない研修を辛抱して聞かなければならない。忍耐の時間です」と強調しているようなものだ。

参加者の判断を尊重しよう

 主催者代表の挨拶はともかく、注意事項は連絡しておいたほうがよいのではないかと思う人もいるだろう。しかし、私がトレーナーとして演習プログラムを実施する際は、主催者代表の挨拶も運営スタッフによる注意事項の連絡も一切ない。  トレーナーの私が、演習の背景やトレーナーの自己紹介、演習の目的、時間配分、参加者に期待する役割を30秒程度で話して、すぐに演習がスタートする。そのやり方で参加者が困っているのを見たことがない。  まれに資料が不足していることがある場合は、参加者が予備の資料を自分で取りに来る。緊急の電話が入った場合でも、演習に熱中してそれを優先したければ、「あとで折り返します」と言って電話を切ったり、あるいは会場の外に出て電話をしている。参加者が自分の判断で対応しているのだ。 「メモをとりたければ、PCを開いてどうぞメモをとってください」と案内している。しかし、演習に集中しているので、PCを開く人はほとんどいないし、PCで内職をしている人は皆無だ。  こうしろ、ああしろ、あれをするな、これをするなと、指示・命令をしたり、禁止事項を羅列したりすることは、参加者の意欲を低下させ、研修成果を損なう。それらを省いても問題はないどころか、実際に割愛してみれば、参加者のモチベーションが上がり、研修成果が高まることを実感するに違いない。 【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第106回】 【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある
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チームを動かすファシリテーションのドリル

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