安倍首相のスペイン訪問、スペイン最大紙は報じず、他紙も報道少なめ

El Mundo

3大紙の中で安倍首相のスペイン訪問を比較的きちんと報じた『El Mundo』

 安倍首相が今月18―19日にベルギーのブリュッセルで予定されているアジア欧州会議(ASEM)に出席する前の16日、スペインのマドリードを訪問。サルスエラ宮殿を訪問して国王フェリペ6世に謁見、その後、モンクロア首相官邸に移り今年6月に就任したペドロ・サンチェス首相と会談をもった。

スペイン最大紙は安倍訪問を無視

 スペインの3大紙『El País』、『 El Mundo』、『 ABC』の中で安倍首相の訪問内容を比較的詳細に報じたのは『El Mundo』だけであった。『ABC』は訪問を伝えるだけで、その詳細についての説明はなし。スペインで一番購読率が高い『El País』に至っては今回の訪問についての報道はまったくなし。(参照:「El Mundo」、「ABC」)  地方紙では、情報元がスペインを代表する通信社EFEを利用するカタルーニャ地方の2大紙『La Vanguardia』と『El Periódico de Cataluña』が安倍首相の訪問を取り上げている。特筆すべきは、前者の記事の中にスキャンダルに色々と巻き込まれながらそれに抵抗している能力を称えて<「テフロンの安倍」>というあだ名が付けられていると指摘している点だ。  ちなみに、同様に王宮と首相官邸からも広報として今回の訪問が伝えてはいる。

スペインにおける「アジア」への関心はもはや日本ではない

「El País」が報じていないというのを筆者は意外に感じてGoogleで安倍首相のスペイン訪問を検索して見ると、同紙に掲載されていたのは2014年にスペインを安倍首相が立ち寄った記事であった。それは首相がポルトガル訪問のあと、フランスに向かう途中でスペインの巡礼地サンティアゴ・デ・コンポステラでラホイ(当時)首相と短時間の会談をもっただけの訪問であった。この訪問ではラホイ首相からガリシア地方の代表ワイン5本が贈呈され、安倍首相からはその返礼に日本酒が3本渡されたという内容も記載されていた。(参照:「El País」)  今回の安倍首相のスペイン訪問を伝える記事が少ないということが意味するのは、スペインでは日本の政治そして政治家への関心が非常に薄いということなのである。それは同時に少なくともスペインにおいて日本外交は体をなしていないという事であろう。逆に、日本においてもスペインの政治及び政治家については殆ど無知であるのと同様である。  中国の習近平首席が2016年11月24日に南米チリ、エクアドル、ペルー訪問のあと、給油も兼ねてスペインのカナリア諸島に立ち寄った際に、スペイン政府からソラヤ・サエス・サンタマリア(当時)副首相と僅か50分間であったが会談した出来事は「El País」を始め、スペインの各紙がそれを報じ、またテレビニュースでも報道された。  1990年代まではスペインにおいてアジアで一番関心を集めた国は日本であったが、それ以後は中国に視線が向けられ現在に至っている。余談ながら、「El País」の極東駐在員も東京から北京に移動して、北京から日本のことについて報道しているのが現状だ。(参照:「El País」)
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