── 沖縄県知事選では、辺野古移設に反対する玉城デニー氏が大差をつけて勝利しました。
倉重:安倍政権にとっては大きな打撃だと思います。辺野古新基地建設にブレーキがかかるうえ、来年の参院選を念頭に「選挙の顔が安倍さんでは参院選を戦えない」という声が必ず出てきます。自民党総裁選で、石破さんが党員票の45%を確保して善戦したことと合わせて、安倍政権にとってはダブルショックでしょう。
── 安倍政権の外交についてはどう評価していますか。
倉重:具体的な外交成果はありません。北方領土問題の解決も後退しています。9月12日に開かれた東方経済フォーラムに参加する前、安倍さんは「領土問題を解決して平和条約を締結する」と語っていましたが、プーチン大統領から「年内に前提条件を付けずに平和条約を締結しよう」と切り替えされ、反論もできませんでした。
ロシアは、2001年に中国との間で「善隣友好協力条約」を結んだことによって、中露の信頼を醸成し、国境画定交渉に決着をつけることができたと言われています。ロシア国内では、この前例を踏まえて、北方領土問題を棚上げして、まず日露関係を前進させる条約を結ぶべきだとの意見があるのです。安倍さんは、プーチン大統領と22回も会っていながら、二島返還すら危うくなっているということです。
拉致問題も厳しい局面を迎えています。北朝鮮は、「17人の政府認定拉致被害者のうち、5人は返し、4人は未入国で、残り8人は死亡した」と一貫して主張しています。それに対して、安倍さんは全員生存しているという立場をとってきました。
日朝両国が、お互いにその真実を明らかにする努力をしてこなかったツケがいま回ってきています。全体としては朝鮮半島の雪解けが進んでいきます。各国の北朝鮮との経済交流も深まっていきます。北朝鮮は、拉致問題を解決して、日本から資金援助を得ようと考えるでしょう。その時に、拉致被害者についての不都合な真実が出てくる可能性があるのです。安倍政権はそれに耐えられるのか。重要な局面を迎えることになるでしょう。
── 安倍政権は、対米追従の外交を続けています。
倉重:そろそろその外交路線に限界が来ているのではないでしょうか。中国が台頭し、アメリカが東アジアから後退していくという安保環境の劇的な変化にどう対応していくのか。安倍さんは日米同盟により軍事的抑止力を強化する道をひた走りしていますが、私はその道は持続不能だと思います。米国製兵器の購入も防衛費の突出も日本の財政事情が許さないでしょうし、極端な少子化時代に自衛隊員のリクルートも益々困難になってきます。
もっと日米同盟を相対化し、対米追従路線を見直す。そして、経済的にも軍事的にも大国となった中国とどう上手に付き合い、共存していくのか。外交強化による軍縮をどれだけ達成できるのか。日本が自分の頭でこれを考え抜くこと。それが政治の最重要課題になってくると思います。
<聞き手・構成/坪内隆彦(月刊日本編集部)>
げっかんにっぽん●「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。