マイクロソフト共同創設者のポール・アレン氏が死去。深海から宇宙まで駆け抜けたその人生

宇宙事業への取り組み

 アレン氏の、パーソナル・コンピューティングや軍艦探索における功績については、他の専門の方に譲りたい。本稿ではアラン氏が同じく情熱を傾けた、宇宙事業について振り返りたい。  アラン氏と宇宙との(表立った)かかわりは、2001年にまでさかのぼる。このころ、地球外生命の発見を目指す非営利団体「SETI協会」は、天体観測や地球外生命の探索に使うための、巨大な電波望遠鏡の建設を模索していた。そこへアレン氏は、自身の財団を通じ、3000万ドル以上を寄付。無事に建設が始まり、2007年にはその一部の運用が始まっている。この施設には、アレン氏の名を取って「アレン・テレスコープ・アレイ」と名づけられている。  また2004年には、米国企業スケールド・コンポジッツに投資していることを公表。同社はこの資金をもとに、有人宇宙船「スペースシップワン」を開発し、同年6月と10月に、高度100kmの宇宙空間への到達に成功した。民間が開発した宇宙船が宇宙に到達したのは、これが史上初めてのことだった。  同社はこれにより、当時開催されていた宇宙船開発のコンテスト「アンサリXプライズ」で優勝。現在は英ヴァージン・グループの出資を受け、本格的な宇宙旅行の実現を目指し、宇宙船「スペースシップツー」の開発を続けている。
スペースシップワン

民間が開発した宇宙船として初めて宇宙に到達した「スペースシップワン」と、ポール・アレン氏(中央の人物) (C) Scaled Composites

 さらに2011年には、そのスペースシップワンの設計者とともに、「ストラトローンチ・システムズ」という宇宙企業を創設。世界最大の巨大な飛行機を開発し、ロケットを上空へ運び、そして空中発射するという壮大な構想をぶち上げた。  ロケットの空中発射は、打ち上げる軌道やロケットの飛行経路を自由に設定できたり、打ち上げが天候に左右されなかったりといった利点がある。すでに小型ロケットの空中発射は、他の企業が実用化しているが、それを中型~大型ロケットでもやろうというのが同社の狙いである。  現在、すでに巨大飛行機の開発が進んでおり、飛行に向けた地上試験が続いている。今後、2019年に初飛行、そして2020年の商業化を目指している。  深海から宇宙まで、飽くなき挑戦を続けてきたアレン氏にとって、65歳での死はあまりに早すぎるといえよう。しかし、アレン氏の、過去を大切にし、同時に未来も切り開こうという意志は、志を同じくする人々によって受け継がれ、これからも絶えることなく進み続けることだろう。
ストラトローンチ・システムズ

ストラトローンチ・システムズが開発している巨大飛行機。中央部分にロケットを吊り下げ、空中で発射することを目的としている (C) Stratolaunch Systems

<文/鳥嶋真也> 宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)など。 Webサイト: http://kosmograd.info/ Twitter: @Kosmograd_Info(https://twitter.com/Kosmograd_Info) 【参考】 ・Statement on Paul G Allen – Vulcan(http://www.vulcan.com/News/Articles/2018/Statement-on-Paul-G-Allen) ・What I loved about Paul Allen | Bill Gates(https://www.gatesnotes.com/About-Bill-Gates/Remembering-Paul-Allen) ・Forbes 400 2018(https://www.forbes.com/forbes-400/) ・Allen Telescope Array Overview | SETI Institute(https://www.seti.org/ata) ・How We Launch – Stratolaunch Stratolaunch(https://www.stratolaunch.com/how-we-launch/
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。 Webサイト: КОСМОГРАД Twitter: @Kosmograd_Info
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