データベース化はされてるけど結構ざっくり!? タイの図書館に行ってみた

「マイクロフィルムになってない」と言われていたが……

 声をかけた職員にマイクロフィルム管理室に案内され、そこの職員にバトンタッチされた。事情を説明し、1950年代のある期間を指定すると、その職員はうしろの棚から大きな台帳を出してきた。  そして、その年代のリストを見る。ちょうど筆者が欲している時期だけがごっそりとマイクロフィルム化されていない。職員はここに記載されていないなら、ないものはないと自信満々である。  職員はある階を紹介してくれた。そこにタイの新聞が保管してあるという。その階にはまた受付があり、そこで必要な新聞名や時期を告げる。古すぎてないかも、と言われる。  タイ国立図書館は、日本の国会図書館などと同様に、一般利用者は本棚に近づけない閉架式である。受付で職員に探している資料について相談すると、心当たりの本を本棚から多数持ってきてくれる仕組みになっている。  結論を言えば、目的の新聞は無事みつかった。コピーではなく、当時発行された紙そのものだ。長い年月を経て、紙は赤みを帯びるように変色しているし、端からぼろぼろと崩れそうになっている。1か月から2か月分をまとめたファイル自体も崩壊寸前の状態だ。  こんな貴重そうな資料を渡されるとは思ってもみなかった。もちろん、手垢をつけないようにするための手袋も持っていない。手袋がないが触っていいのか、と訊くと、 「手を使わないでどうやってめくるのよ」  と笑われてしまった。  職員は筆者の目の前のデスクに新聞のファイルを数冊置いていくと、そのまま受付カウンターの中に戻った。見張るわけでもなく、特に注意事項もなく……。非常にいい加減だ。あとで知ったのだが、写真撮影も問題なかったようだ。

無料Wi-Fiはないが、デジタル機器使用は可能。蔵書の写真撮影も咎められない

 目の前に置かれた資料を見て目を疑う。ファイルの厚い表紙の前に「□□□□年○月×日、マイクロフィルム化完了」とあった。単に人間の管理ミスによって、そのマイクロフィルムが行方不明になっていたわけだ。  デジタル化は基本、ある程度高精度なアナログ管理の上で成り立つたのだなと勉強になった。タイの図書館のオンラインサービスが全然役に立っていない事情を生で見られたので、遠くまで足を運んでよかったなと思う瞬間でもあった。
図書館の看板

タイ語で図書館は「ホングサムット」で、直訳は「帳面の部屋」

<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NatureNENEAM)> たかだたねおみ●タイ在住のライター。近著『バンコクアソビ』(イースト・プレス)
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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