「お偉いさん」が後ろにデンと座っている企業研修は失敗する。駄目な企業研修の特徴

研修担当者も研修に参加するべき

photo via Pexels

 前回紹介した通り、研修の冒頭で「こうしろ、ああしろ」「あれをするな、これをするな」と指示・命令をしたり、禁止事項を羅列することは、参加者の意欲を低下させ、研修成果を損なう。  また、研修で当然のように行われていることで、参加者の意欲をもっとも低下させてしまうものには、会場の後ろから研修を監督することが挙げられる。研修参加者の上司にあたる“偉い人”が、会場の後ろにでんと座って、参加者の一挙手一投足に目を見張らせている。偉くなくても、研修担当者が監督している。こうしたケースはじつに多い。  こう指摘すると「会場の後ろに監督者がいるということはごく当たり前のことで、何が問題なのかわからない」という声が聞こえてきそうだ。しかし、身につけたいスキルをパーツ分解し、コアスキルを反復演習する「分解スキル反復演習プログラム」を実施していると、監督者がいることが参加者の演習意欲を低下させ、演習効果を下げることが如実にわかる。  参加者一人一人の演習パフォーマンスは、偉い人であればなおさら、偉い人でなかったとしても、誰かに見られているということが影響を与え、普段通りのパフォーマンスにはならない。  監督者を意識して発言をしたり、発言をしなかったり、演習でのスキル発揮の仕方が変わったりする。一人一人に与える影響は軽微だったとしても、会場に20人の参加者がいたとすれば、20人に与える影響の総和は無視できないレベルになる。  演習でスキル発揮できるレベルが異なれば、それだけ演習によるスキル伸展が制約されるということだ。普段通りのパフォーマンスにならなければ、それだけリアルな演習ではなくなってしまい、演習の実践性が損なわれることになる。  このように申し上げると、「偉い人が監督することは、参加者のやる気を高めることに繋がるのではないか?」という意見に接することもある。そのような意見に対しては、逆に「偉い人が見ていないとやる気がでないという状況は、現実的ではないのではないか」とお聞きしたい。  通常のビジネス活動で、常にその場に上司がいて、その上司から監督されながら仕事をしている人も、なかにはいるだろう。しかし、大半は上司がいることもあればいないこともあるに違いない。  上司がいようがいまいが、高い意欲をもってパフォーマンスを発揮することが望ましいことは間違いない。研修においてもそうした場面を再現することは、とても重要なことなのだ。  さらに、「仮にそうだとしても、研修運営上、何かあったときに研修スタッフが会場にいて、監督していることは必要なことではないか」と考える人もいるだろう。  そうした場合は、トレーナーがその役割を担うという方法もある。トレーナーが外部の人などで、研修主催者とトレーナーが異なる場合は、研修担当者を同席させなければならない。その場合は、研修担当者をいち参加者として参加させればよい。  研修担当者が後ろで監督しているのではく、研修担当者がいち参加者として、ほかの参加者と同じテーブルにつき、研修を受講するのだ。つまり、会場内には研修に参加している人以外は、誰もいないという状況をつくりだす。このことが研修効果を上げるのだ。
次のページ
若手社員も知っておくべき研修のコツ
1
2
チームを動かすファシリテーションのドリル

「1日1分30日」のセルフトレーニングで、会議をうまく誘導し、部下のモチベーションを自然にあげられるようになる!

 
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会