S-300は索敵範囲250キロ、同時に12の攻撃目標と100の探索設定が可能で、2万7000キロまで上昇が可能だという。この特性からイスラエルのベン・グリオン国際空港やパルマヒム空軍基地まで標的範囲になるという。S-300のレーダーシステムでパルマヒム空軍基地からイスラエルの戦闘機が飛び立つことまで傍受することができるのである。
しかも、イスラエルがシリアにいるイラン軍とヒズボラを空爆する時はいつも低空にて侵入しているが、S-300の設置によってそれが出来なくなるという。(参照:「
Infobae」)
ロシアはすでに、S-300をシリアのタルトゥース海軍基地に、そしてS-300の性能を更に上回るS-400を同じくシリアのフメイミム空軍基地に設置している。それは自国の軍需品を守るためで、その操作もロシアの軍人によって行われていた。(参照:「
El Pais」)
しかし、延期されていたS-300のシリアでの配備が昨年あたりから再度持ち上がるようになり、イスラエル側も、現在ギリシャが所有している旧式ではあるが嘗てキプロスに配備されていたS-300で、ギリシャ軍と一緒に軍事演習をしてS-300の攻撃から逃れる訓練をしていたという。(参照:「
Noticias de Israel」)
そこにきて、今回の決定である。
イスラエルのネタニャフ首相が「S-300がシリアに配備されないようにせねばならない」と言って恐れていたことが遂に現実となったわけだ。
今後、イスラエル側はどう出るか? おそらく、S-300のレーダーに捉えにくい第5世代戦闘機F-35をイスラエルの攻撃の主力として利用することになるであろうと言われている。今年5月に初めて攻撃に参加したF-35は、これまで50機が発注されており、昨年末の時点で33機が揃っているのだ。
更に、敵の電磁周波数帯域の状況を分析した上で妨害するシステムを育てる電子戦も重要となって来る。この開発を米国の協力を得て発展させる必要に迫られている。これによって、S-300のレーダーの機能を攪乱させてこれまでのように空爆ができるようにするというのがイスラエルの狙いであるという。(参照:「
Noticias de Israel」、「
La Informacion」)
<文・白石和幸 photo by
EllsworthSK via wikimedia commons(CCBY-SA 3.0)>