英国のEU離脱で最も影響を受ける国!? オランダの生存戦略

英国なきEUでのオランダの生存戦略

 貿易取引の分野だけでなく、オランダにとって英国はパトロン的な存在であった。EUがドイツ、フランス、英国の3か国がリーダー国として存在していた。が、オランダは英国の盾のもとで英国と連携してEU内で振舞っていた。  英国が抜けることによって、オランダはフランスとドイツに対抗する意味で「ハンザ同盟2.0(Hanseatic League)」を組織するようになった。この同盟にはオランダ同様に英国が抜けることによってマイナス影響を受けるアイルランド、デンマーク、フィンランド、スウェーデンが核になり、それにバルト3国(エストニア、ラトヴィア、リトアニア)が加わって「オランダと7人の小人」と呼ばれている。これらの国は英国の離脱で没落しないように対策を講じる必要があるのだ。  ちなみに、英国が抜けることによって、台頭が予想される国もある。それは、イタリア、スペインそしてポーランドである。(参照:「La Vanguardia」)  また、オランダは歴史的にも貿易で発展した国である。英国が抜けた後を補うべくポーランド、ロシアあるいはウクライナと新しい取引進展の為の開拓をしているという。オランダの経済省企業誘致局(NFIA)は既に200社の外国企業と接触があるそうだ。(参照:「EFE」)  オランダでは収入の30%が税金対象外になることや、生活の質の高さ、ヨーロッパの中央部に位置し、英語も一般レベルで普及している、といったことを企業誘致のメリットとして自国をアピールしている。  その甲斐あって、2017年には18社がオランダへの英国からの移転を決めたという。2018年にはユニレバーがロンドンを閉鎖してロッテルダムに企業を統合することを決めた。三菱UFG銀行もロンドンからアムステルダムへの移転を決定。また、欧州医薬品庁(EMA)の場合は40都市の中から>ロンドンからの移転先を物色。最終的に、バルセロナを蹴ってアムステルダムに2019年に移転することになった。EMAは900人のスタッフに加え、毎年世界から3万人の訪問があるとされている。この進出はホテル業界にとって潤いになる。(参照:「EFE」)  ただ、当の英国では労働党がBrexitの再投票を実施してEUに留まる可能性も模索し始めている。英国のEUからの離脱に伴うマイナス要因が余りにも大きいからである。  あまりにも影響が大きすぎるBrexit。今後も要注意だ。 <文/白石和幸> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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