北海道地震発生直後の現地リポート。新千歳空港には毛布が積まれていた

新千歳空港に積まれていた毛布

震災発生から間もない頃、新千歳空港に積まれていた毛布

 辛うじて空港機能を取り戻していた新千歳空港には、まだ毛布が山積みになっていた――。  9月6日に発生した北海道胆振東部地震の際に、筆者はホノルルに滞在していた。婚前旅行・ハネムーンの類であればめでたい限りなのだが、単なる取材である。二泊四日で、80過ぎの男性の昔話を聞きに行っただけだ。  その直後に別件のイベントと仕事もあり北海道・ニセコへ行くことが決まっていた。当然、余震のおそれは十分にあるし、このイベントが中止になるなら北海道行き中止も考えたが、友人でもある主催者に確認すると、「そのまま決行する」という。なので筆者も予定通り北海道に行くことにした。  まずここでおさえておきたいのは、今回の北海道で発生したのは「ブラックアウト」だった、ということだ。発電所そのものが何らかの理由で動かなくなり、都市や地域全体の機能が停止してしまう状態である。  ブラックアウトの恐ろしさについては、夏目幸明著「大停電(ブラックアウト)を回避せよ!」マルク・エルスベルク著「ブラックアウト」などに詳述されているが、単に数時間家の中の電気がつかなくなり、数か月後に「停電ベビー」が産まれる、といった程度の悠長なものではない。  早い話が信号がつかないため車の移動に秩序がなくなり、その前にコインパーキングに停めている車は出せなくなり、クレジットカードは使用できなくなり、たとえ現金があってもバーコードが読み取れないので決済ができなくなる。  さらに深刻なのが病院回りで、ICUに入院中の患者や人工透析を受けている人は即時命の危険にさらされることになる。携帯電話の充電もできないので情報も遮断される。テレビ・新聞は当然全滅だ。  飲食店は冷蔵庫も冷凍庫も使えなくなるので食材の安全確保ができなくなる。プロスポーツも夜間照明と中継があることが前提で成り立っている。「こんな時期にプロ野球なんか」というのは勝手だが、では球場近くの焼き鳥屋さんはどうなるのか。電車や飛行機の運用にも差し障りが出てくる……。  結局のところ、近代文明は電気があることを前提に成り立っている。卑近なところで言うと、筆者が最近引っ越した新宅はオール電化住宅である。この原稿も電力で動くPCで書いて送信し、ネットメディアに掲載されているということは電力を使ってご一読いただいていることになる。大げさでも何でもなく、ブラックアウトは文字通り国家存亡・文明崩壊・人類生存の危機なのだ。  こういう時期に北海道へ行くことにより、少しでも現地にお金を落とせるならば被災地支援にもなるのではないか。そう考えて筆者は予定通り現地入りすることを決めた。
次のページ
空港で、毛布にくるまる利用客の姿
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会